2020年に読めて良かった本。 リモートワーク殺人事件「はだかの太陽」
自分以外でもSFの面白さに目覚めたひとが多い一年だったのかな。「1982年」が突然話題になったりしていたけど、2020年に読めたことも含めて充実感でいっぱいになって、みんなにも読んでほしいのは「はだかの太陽」。
PS4の「デトロイト」のような刑事コンビのリモートワーク小説だ。
徹底的に管理されて、人々は触れ合うことなく、何十体ものロボットに世話されてくらす、トラブルの全くない星。
この星で殺人事件が起きる。
争いごとの全くない惑星なので対処ができず、地球の人間&ロボットの刑事コンビに依頼が来る。
どんなウイルスを持ち込んでいるかわからない地球人は、念入りに消毒されて、誰とも対面せず、通信を使って住人たちに聞き込みをする。
SF版・安楽椅子探偵みたいなイメージで書かれたのかもしれないけど、これが完全にリモートワーク。
・住人全員が「対面アレルギー」で、他人と同じ空気を吸うのに恐怖を感じる惑星なのに、会ったこともない人どうしで、殺人の動機がなぜ生まれたのか?
・「人を傷つけてはいけない」とプログラミングされているロボットに、どんな命令を出せば殺人が可能なのか?
この謎かけからして、めちゃ面白い。
登場人物が一堂に会するリモート会議は、それぞれの家から送られた立体映像をつなぎ合わせて、うまく丸型のテーブルをみんなで囲んでいるような感じにして行う。
「スターウォーズ」とかにも出てくるけど、立体映像をそこにいるようにブオンと出力する装置。あれを複数組み合わせて架空の会議室にする。
現代の「ほんとうのリモート」を使っている状況と比べて、「ここあってる!」「これはない!」とかいちいち考えながら読むのが、いちいちおもしろい。
主人公の地球人が、ドームで覆われた地球では見ることのできない太陽に驚くのも、 2000年以降の地球を予測しているよう。
現代の子は太陽が恵みを与えてくれるものじゃなくて、温暖化と熱中症をもたらす厄介なものと認識している。
太陽と、見えないウイルスにおびえながらも、大地へ踏み出して、わずかな距離を散歩するシーンは、思い出すだけであたたかくなる素敵なシーン。
前作「鋼鉄都市」の続編だけど、刑事とロボット刑事のコンビであることぐらいを頭に入れておけば、まあ大丈夫。
書かれたのは60年ほど前。そのころ想像した「未来」にちゃんと地球人が生活していて、そのうちの一人が自分であることが、美しいよね。なんか。かけがえない。
アシモフの「ファウンデーション」も一巻だけ読んだ。自分が死んだずっと後の地球を滅亡から守る話。「三体」も数百年後の地球の存続を考えていた。SF作家というのはいつも他者と未来を考えていて、なんて想像力があって愛に満ちてるんだ。