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サンソフトが帰ってきた! あるいは「アトランチスの謎」へのラブレター

サンソフトというゲーム会社が復活宣言。(死んでない)
代表作は、みうらじゅんが「クソゲー」という言葉を生み出したきっかけになった一本ともいわれる「いっき」のほか、「へべれけ」昔の「バットマン」、格闘ゲームの「わくわく7」とか。

名作!ってほどじゃなくても、一部の映像だけ凄い、音楽だけ凄いなど、ムラのあるふしぎな感触のゲームが多くて、記録より記憶に残るメーカー。ぼく個人は、マリオを目指して作ったはずが似ても似つかないものになった怪作「アトランチスの謎」のファンでもある。

アトランチス、見た目では分からないけど主人公がふつうに動いてくれないことで有名で、こんなもん子供がクリアできるわけがない。

何百本とアクションゲームにふれてきたけど、これに似た感触のゲームを見たことがない。最初の一歩を踏み出すのは遅いのに、途中から滑るように快適に走り出し、ジャンプはかすかに飛ぶか、ぽーんとすっ飛ぶかの二択で、出会い頭の敵に激突しまくるのを、残機の多さでカバーしている。

攻撃手段がダイナマイトだけなのも凄い。この時代のアクションは、みんな踏みつけるか切るか撃つかぐらいしてるのに、爆発まで時間差のある上に自分にも当たるダイナマイトで幻の大陸アトランチスに挑む。

これが正統に1面から始まって5面くらいでゲームオーバーになれば、単に手が出ないゲームというだけで諦めるのに、全100エリアはワープドアで複雑につながっていて、突然70面とか80面とか、凄いエリアの入口に足先だけは踏み入れることができる。その奥に進むのは子供には難しい。この大胆な終盤のチラ見せにより
「ぼくがもうちょっと上手くなれば、この広くて大いなる世界を旅することができるかも」
と、純真な子供はだまされた、じゃない。夢中になったのだ。

道中に浮いているアイテムの効果もわからなくて、これも
「ぼくが大人ならきっとアイテムを使いこなして終盤のすごいエリアを見ることができるのに・・・」
と本気で思っていた。

攻略ルートとエンディングがわかってしまうと案外あっけないゲームで、アイテムは単にしゃがむと得点が入るだけでほぼ意味がなかった。

大いなる謎を秘めたゲームだと思っていたのに、大人になって構造を知ってしまえば、単に粗いゲームなのだ。

最短数分でクリアする方法がyoutubeでポンと出る現在。
「アトランチスの謎」は子供のころ本気で信じていた心霊や宇宙人の番組のよう。これはすごいものだと思っていたら、実はスタッフが適当に考えた話で、あっけなく終わる、みたいな。ゲーム自体が木曜スペシャル。

難しいゲームがすぐに攻略法を出されてネタバレを出したり、スタッフの正体が見えてしまった今とは違う。
ゲームは未知のもので、自分には手の届かないなにかがこのカセットの中に詰まっているんだ、と信じられる時代の象徴。それが自分にとってはアトランチスの謎だ。

どこに行ってたのか、何をする気なのかは知らんが、とりあえずおかえりサンソフト!


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南ミツヒロ
読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。

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