主人公の持ち物を捨てる権利がない!「ライフイズストレンジ2」のプレイヤーと主人公の距離感
【大きなネタバレはしませんが、少しだけ内容にふれます】
絵が好きな高校生ショーンと、物体にふれずに破壊、移動させるテレキネシスに目覚めた弟ダニエル。
兄弟は、ある事件に巻き込まれ、アメリカを逃避行するなかでいくつもの出会いと別れ、選択を迫られる。
頼れる大人を失った兄弟は、自分たちなりにルールをつくる。
パワーを隠すこと。危なくなっても、最後の最後まで超能力は使わないこと。ただし、能力は正確に、強力に使えるように訓練はすること。
だけど、生きるすべを知らない兄弟に社会は冷たく、時には事故に巻き込まれる。旅路で助けてくれた大切な人が命の危機にある。その瞬間ごとに、弟に能力を使えと命じるのか、耐えるのかを選択する。
一般的な映画とくらべて特に残酷な展開ではなくても、選択肢によって、こっちも責任を負わされる感じがつらい。
操作するのは兄だが、物体にふれずに移動、破壊できる「テレキネシス」に目覚めるのは幼い弟ダニエル。
超能力は、ダニエルという美少年がかかえた爆弾だ。
「教育方針」によっては、弟は力を過信して、二度と平穏な生活には戻れなくなってしまう。
能力のせいで、ダニエルの「腫れ物」感が強くなっているのがいい。
同じく選択肢で人生を決める「デトロイトビカムヒューマン」で、家事手伝いアンドロイドが小さい女の子を連れて逃げ出すシーンがある。その先で逃亡生活に必要なものを盗むか、寒さに震えて眠るかを決める。本作でも似た選択を迫られる。
このゲームでは、チョコバーだ。
逃亡に疲れて、足の痛みにぐずる弟をつれて、体も心もたいへんなストレスを抱えた兄弟が、やっとたどり着いたみやげ物屋。何を買うか。
そして、弟の大好きなチョコバーの前で表示される「盗む」の選択肢。
お、来やがったな、このゲーム俺を試してきてるな。その前に、暖かい家族のやり取りの象徴としてチョコバーを出してきたあとで!
これからの旅路を考えると、所持金をわずかでも節約したい。店番は感じが悪い。監視はされてなさそうだ。
他のゲームではバンバン殺人も躊躇なかったぼくが、チョコバー1本に真剣に迷う。それで、弟は喜ぶのか? でも、空腹は限界にきている。遭難した人がチョコバーで命をつないだ話があるぐらいだし、弟にとって、より深刻なトラウマになることを回避できるかも・・・。
そのあとにもう一段階、
「うわあ、こう揺さぶってくるか!」って展開を持ってこられる。たまらん。これからのアドベンチャーゲームの主流になるかもしれない。
ストーリーだけでなく、選択肢をつきつけられて、自分の性格が暴かれる面白さ。
前作と共通するのは
「主人公が芸術方面に興味があり、それが救いになること」
そして
「手帳や携帯電話を使ったキャラクターの見せ方」
ショーンは、口に出してない気持ちをいつの間にかスケッチブックに書いていたり、弟が勝手に荷物の中に松ぼっくりを入れてたりする。
プレイヤーは主人公のアイテム欄を管理できない。
ちょっと珍しくない?なぜできないかというと、プレイヤーイコール主人公じゃないから。僕らは、彼らのリュックを覗くことができるけど、勝手に中のものを捨てる権利がない。(操作してるのに!)
プレイヤーと、操作する兄ショーンと、兄に影響を受ける弟ダニエル、それぞれに、わずかだけど隔たり。距離がある。
主人公のショーンがプレイヤーであるぼくにも打ち明けない気持ちを、スケッチブックの落書きに書いていたりする。
家に帰れなくなっても、ショーンの持ち物にはずっと自宅のカギとかが入ってる。RPGで初期装備をずっと持ってたら、それは単にプレイヤーがそのままにしてるだけだけど、それとは意味がちがう。捨てる踏ん切りがつかないから持っている。
ライフイズストレンジは、オブジェや持ち物、全てに意味がある。
ドラッグ、タトゥー、宗教といった扱いづらい文化にふれたり、体験版の主人公と出会ったり(ヒーローに憧れる少年と、望まないパワーを持ってしまったダニエルの対比がいい!)
「超能力少年もの」にあってほしい、
「見た目は弱いけど実は強い少年が、我慢してため込んでため込んで秘密にしてきた能力で最後にドーーン!!」とか、わかりやすいスカッとする展開を抑えているので、単純におもろいぞオススメやぞとは言いづらい。
制作会社がハリウッドじゃなくてフランスなのでお国柄もあるのかな。
子供の体にスーパーパワーが宿る映画「シャザム!」でも、パワーを使って自由を謳歌するのに、このゲームでは、周囲と違うことは社会からはじき出される理由にしかならない。
だからこそ、女子ふたりがタイムリープできゃーきゃー楽しむ愛しい瞬間があった前作を覚えていると、兄弟の旅は痛々しくて、なんか違うなーと思われるだろうけど、はみ出し者の集団に受け入れられ、一時的に居場所ができるところまでは進めてほしい。同じスクエニが出したFF7Rと同じく、こっちも次回作が出るかどうかは売上しだいなのだ。
何気ない家具や小物ひとつからでも物語を想像できる豊かなゲームなので、ここで終わりにはしたくない。
第三、第四の能力者が現れることを願って。
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読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。