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ここを読んでいっこも興味がわかなければ、残念ながらぼくはあなたにとって価値がない。
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#推薦図書

すばる7月号を学校の図書室に置こう

すばる7月号を読んだ。 李琴峰さんのアイオワ滞在記が良すぎて共有したいので、ここだけでもカッターで切り取って小冊子にして全国の高校の図書館に吊るそう。 アイオワ大学で、反LGBTQの活動家が講演をすることに、大学生たちが一斉に抗議する。 コールで、アートで。それぞれのスタイルで反差別を態度で示し、近所の車はクラクションを鳴らし、武装警察まで巻き込む騒ぎ。 その一部始終をその場にいるような迫力で記す。 もちろん「楽しい」話ではないけど、日本の学校の冷めた感じを経験したから、学

【読書記録】春日太一「時代劇入門」 時代劇は過激なジャンル。水戸黄門のような作品が異端だった

農民が「直訴」って書いた紙を竹の割れ目にはさんで、お上に出すかんじで、 「やることないし映画とか飽きた」と言ってる人には、この本を竹竿の割れ目に挟んで出そう。 黒澤明って?清水次郎長って?西南戦争って?勝新太郎って?忠臣蔵って?というレベルの僕でも読める、知識ほぼゼロからの時代劇カタログ。 名前だけでも覚えとけば損のない、役者名と作品と監督名を地引網でかっさらうようにガーッと並べて、最低限の関連事項をバーッと教えてくれる。 歴史の勉強ではない。 ひとりのアイドルやスポー

ポメラニアンすごい不倫の話聞く

長嶋有「俳句は入門できる」 すーーーっごく!良かった。興味がないと決めつけていた分野が、想像を越えた軽やかさで迫って来て。 ストⅡのボーナスステ-ジを描いた句も、ブーメランを投げた後で一句読むブーメラン句会も、あやうく水難事故になりそうな状況の句も、全部。静かでスリリング。こんな趣味が、いつでも始められるのに、やってなかったなんて。 スナップ撮影のように17文字で切り取り、意表をついた単語チョイスや、一文字の微調整でカメラワークを操作して、背景のボケ味を決める。 ボクシン

内澤旬子「着せる女」の装丁がすごい!

知り合いの男性作家、写真家、編集者を一流の店舗につれて行き、カリスマフィッターとともにスーツを着せるエッセイ。 バラエティ番組でもこういうのある。「CMのあと、ダサかったお父さんが大変身!」みたいなやつ。 見る目のある女性は、服に無頓着な男に普段からイライラを溜めているのでしょうか。自分の良さを殺している、もさっとした姿で見られることに何の抵抗もない人たちに。 男性から見た、言葉遣いが汚い女を見たときのガッカリ感に近いでしょうか? 登場する男性作家たちは、「クレイジージャー

極夜行前

暗い場所を体験するには、本がいちばんいい。 冒険家、角幡唯介の「極夜行前」。 太陽の昇らない真っ暗な北極を旅する話で、準備段階の「極夜行前」、本番の「極夜行」 2冊で前後巻のようになっています。 今の「冒険」とされているものは、行く前から地形がわかっているし、最悪の場合は救助を呼べる。死の恐怖と心からの喜びにふれられない。 だから、GPSを禁止して、星で現在地を割り出す技術を学んで、視界に頼れない極夜を旅する。 100年前の冒険家がしていたように、誰もしたことがない旅に

学校の図書室にあった『学研まんが できるできないのひみつ』の堂々としたまんがっぷり!

1976年の「学研まんが できるできないのひみつ」が電子書籍化。ぼくが生まれる前から、卒業後もたぶん長いあいだ、学校の図書室にあったまんがだ。 文章だけの本が並ぶ学校の図書館に、学研のまんがシリーズと、はだしのゲンだけが居てもいいことになっていた。 「おいらは、まんがだぞ!まんがは勉強になるんだぞ!」と胸を張って、本棚に並んでいた。 何でもためしてみる「やっ太」と、すぐに否定する「デキッコナイス」の漫才のような掛け合いと、ガールフレンドのアララちゃん、ものしりの「けつろん