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2022年6月の記事一覧

【読書】お嬢さま、オムレツ作りで熊撃ちのパートナー志願!「夏子の冒険」

男たちの誘いを断り続けてきた「お嬢様」がハンターの青年に出会い、あたくしも人喰いグマ退治に付き合いますわと言い出し、お母さまおばあ様大慌て。 「お嬢さまキャラ」ものです。 金持ちの家に生まれただけの「富裕層」なだけではなく、この人の言動がいいからページをめくらせる、そういうパワーをもっている。 2022年でお嬢様キャラとして名を挙げたのはバーチャルユーチューバーの壱百満天原サロメ嬢という人なんですが、そこからだいぶ源流へさかのぼると三島由紀夫「夏子の冒険」にたどりつく。

西部の「空気読み」。アカデミー監督賞「パワー・オブ・ザ・ドッグ」原作冒頭は今年ベスト級!

村上春樹原作の「ドライブマイカー」がアカデミー賞の話題を独占したように日本では報道されたけど、監督賞を受賞し台風の目となったのが「パワー・オブ・ザ・ドッグ」だ。 この原作が「事件」だ。 ゲイの作家が牧場ですごした実体験がもとになっていて、映画化されるまで埋もれていた小説で、発刊年1967年から50年たって、初めて日本語訳された。 舞台は今から100年ほど前のモンタナ州。西部劇の世界。ほこりまみれの世界で、ひげをたくわえて馬を操り、獲物を解体して肉と毛皮にする「男らしさ」が

【読書】少女愛、義理親娘、寝取られ、妊娠、復讐。ナボコフの「ロリータ」

シャーロックホームズと同じくらい、読んでない人でも知っている小説の登場人物。ロリータ・コンプレックスのもとになったウラジーミル・ナボコフの「ロリータ」を読む。 精霊ニンフのような魅力を放つ「ニンフェット」の少女と、愛する者、愛された側の関係の物語。完全にネタバレします。 冒頭で「ロリータ」の名前の呼び方、授業でやったような発声法から始まる。 舌が口蓋を2歩下がって3歩目に歯を軽く叩いてロリータの「タ」を発音すると書いてあると、多くの読者がつい同じように名前を呼んでしまう。ロ