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『賢い医師生活』では雨の日に。『リトル・フォレスト』では寒い冬の日に。素朴で懐かしい韓国式じゃがいもすいとん「スゼビ(수제비)」


今回は韓国の食べ物「韓国式じゃがいもすいとん」について。
レシピと専門店も紹介します。

 韓国には軽食だけの食堂「ブンシクジッ(분식집)」が数多くあります。ブンシク(분식)は軽食、ジッ(집)はお家という意味で、ほとんどのメニューは自宅でも作れる簡単な料理なのですが、不思議と自宅よりブンシクジッで食べるほうが美味しく感じます。

 トッポッキなどは日本人にもおなじみですが、ブンシクジッの定番メニューのひとつに「スゼビ」、日本でいう「すいとん」があります。韓国では子どもの頃から家庭でもよく食べる人気メニューです。

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 同期の医師5人の群像ドラマ『賢い医師生活』の第9話で、雨の日のシーンがあります。韓国では、雨の日といえばチヂミです。買い物に行かずに家にあるものを焼いたとか由来はいろいろあるようですが、韓国人は雨が降るとチヂミを食べたくなるのです。イクジュン(チョ・ジョンソク)がソンファ(チョン・ミド)を「チヂミ? スゼビ?」と食事に誘うと、ソンファはもちろんと言った感じで「スゼビ!」と答え、二人はスゼビの専門店に行きます。チヂミもスゼビも、雨の日に食べると美味しく感じる食べ物です。

 私はじゃがいもとズッキーニを入れたあっさりした味のスゼビが好きですが、熟成したキムチを入れて作るキムチスゼビや、魚介類を入れた海鮮スゼビなど様々な種類のスープや具材で作ることができます。

 また、すいとんを麺に変えたカルクッス(칼국수)という韓国風うどんがあります。学生の頃、友だちと相談して同じ種類でカルクッスとスゼビをそれぞれ注文したりしました。二つのメニューのスープはまったく一緒で、すいとんと麺の違いしかないので作り手に手間をかけさせない気遣いでした。カルクッスもスゼビも韓国ではとても人気で、今は専門店も増えました。

 手軽に食べたいときは街のブンシクジッ、より一層美味しいものを求めるときは専門店に、素朴な味を楽しみたいときは家庭での手料理という風に韓国人は使い分けています。

 日本のコミック原作で映画化された『リトル・フォレスト』が韓国で映画化された際も、田舎に戻った主人公ヘウォン(キム・テリ)が子どもの頃によく食べたスゼビを作るシーンが出てきます。寒い冬の日、キムチスゼビと白菜チヂミを作って食べる様子は、見ているとお腹が空いてきます。

 このシーンは韓国人なら誰もが懐かしさを感じ、食べたくなると思います。韓国版『リトル・フォレスト』では、スゼビ以外にも主人公のお母さんが料理を作るシーンがたくさん出てきます。韓国人が懐かしく思う家庭料理に加えて、パスタやクレームブリュレ、お好み焼きなど最近韓国で人気の食べ物もあるので、日本版と比較して見るのも面白いでしょう。

 韓国人が実家に帰ったときに食卓に出てくるものといえば、白菜汁(べチュウクック 배춧국)、白菜チョン(べチュウチョン 배추김치)、辛いトッポッキ(떡볶이)、干し柿(コッカン 꽂감)、マッコリ(막걸리)、お餅(떡)、冷やし胡瓜豆乳麺(コンクッス 콩국수)、栗の煮物 (バンジョウリン 밤조림)などがあります。映画やドラマの食事シーンに注目してみてください。

◆すいとん◆
漢字では「水団」または「水飩」と書き、日本での歴史は室町時代(1336年~)初期からで、当時の書物に記録あり。小麦粉の生地を手で千切ったり、丸めたり、スプーンですくうなど一口大にしたものを、スープで煮込んだ料理。地方によって料理法や具材、味付けは様々で「ひっつみ」「はっと」などの異名がある。

◆リトル・フォレスト◆
作者の五十嵐大介氏が岩手県衣川村(現:奥州市)で暮らした体験をもとに、自然に囲まれた集落での一人の女性の生活を描く物語で、2002年から2005年、「月刊アフタヌーン」に連載された。橋本愛主演で「夏」「秋」「冬」「春」の4部作として映画化され、2014~2015年に公開。韓国では「リトル・フォレスト 春夏秋冬」として映画化され、2018年公開。日本では2019年公開。


◆韓国式じゃがいもすいとんの作り方◆
「材料」
じゃがいも一個、ズッキーニ 1/2個、煮干しだし1000ml、薄口醤油少々、塩少々
生地:小麦粉 200g、水100g、塩小さじ1/2、サラダ油大さじ1/2

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タデギ:唐辛子粉大さじ1/2、薄口醤油大さじ1/2、唐辛子1/2個、ねぎみじん切り大さじ1/2、塩少々、ニンニクおろし少々、玉ねぎおろし少々(ボールに全てを入れ混ぜます)
*タデギ:スープに食べる前に入れるヤンニョン
*すいとんを食べる時少しずつ入れて好みで味付けをします。

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①小麦粉に塩とサラダ油を入れ生地を作ります。水は少しずつ入れます。
②生地が丸く一つになるまでこねます。
③ラップをかけて2時間くらい冷蔵庫に入れて寝かします。

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④煮干しだしを鍋に入れて沸騰したら食べやすいサイズに切ったじゃがいもを入れます。(中火で5分ぐらい)

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⑤冷蔵庫から生地を出し火を強火にして、一口サイズに手で千切り手早く鍋の中に入れます。

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⑥5分くらい加熱してすいとんが浮かんできたらズッキーニををいれて3~5分くらい再び加熱します。(薄口醤油と塩で薄く味付けする)
⑦完成したすいとんにはタデギで好みで味付けします。

画像8◆スゼビ専門店「ナンポスゼビ 남포수제비」◆
釜山の南浦洞(ナンポドン)にある創業50年近いお店です。ここのスゼビはとてもシンプルでカクテキと一緒に出てきます。スゼビ専門店では海産物やキムチなどを入れてヘムルスゼビ(해물수제비)、キムチスゼビ(김치수제비)など出汁・具材がざまざまな種類を出す店があるのですが、「ナンポスゼビ」のメニューは煮干しの出し汁に薬味のネギ・海苔・ゴマという昔ながらなシンプルなスゼビだけです。値段も一皿500円くらい。量は少なめなのでお腹が空いている時は二皿食べられます。レトロな外観・内装なので70~80年代の韓国の雰囲気を楽しめます。近くには歴史あるお店や屋台が多く、美味しい食べ物がたくさんあるので、訪ねるときはお腹を空かしてから行きましょう。食べ歩きに最高です。

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◆南浦洞(ナンポドン)◆
釜山タワー、国際市場、屋台の広がるグルメ広場などがあり、観光客にも地元民も愛され、いつもにぎわっている街。高級ブランドから激安ショップまでそろい、港町なので新鮮な魚介類も楽しめる。



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