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【覚書】インガは巡るのか30年経っても同じことをしている私

中学1年生の時、二つ年上のサッカー部の先輩に恋をしていた。


恋に恋をしているような浮かれたものだったけれど、
その先輩の姿を見るために、一日中学校を駆けずり回っているような
日々を送っていた。

私はテニス部で、テニス部のコートはグランドとは別のところにあったけれど、
1年生は壁打ちで、グランド横の壁に移動して
壁打ちをする、という時間があったので、
壁打ちをしながら、サッカー部の様子をチラチラ見ていた。
グランドは校舎のある位置からは少し下がっていて、
グランドに向けて階段上になっており、
休憩時間には、階段に腰掛けて
もはや堂々とサッカー部を眺めていた。

その先輩にも、私が目をハートにして眺めていることは
バレバレで、思春期男子からすれば、たまったもんじゃなかったと思う。

田舎だから、だいたい高校も同じところへ進学するのだが、
中学から高校へと進学するその先輩を見送り
2年後、同じ高校へ進学する時には
すっかりその先輩への熱は冷めており、
私はその先輩の友人とお付き合いする運びとなった。
高校1年生の時もまだ、私は恋に恋するような状態だった。
「好きだ」と言われて、なんとなく、その人と
お付き合いすることとなった。
その人もサッカー部だった。
時々、練習する様子を覗きに行ったりはしたけれど、
「女子マネージャー」という存在が、
なんだか先輩も同級生も怖く、積極的に様子を見ることはなかった。
そもそも、「好きだ」と言われて付き合ったという
受け身感もあり、打っても響かない私に嫌気がさしたのか
その先輩とも高校と卒業と同時にお別れとなった。

大学生になった時、
基礎演習のクラスで同じだった子と
「サークル入る?どうする?」なんて話していたら、
「マネージャーというものに興味がある」という話で意気投合した。
私は、「タッチ」に憧れていたので(え?)、野球部…という話も
当然出たものの、大学の部活動は当然、敷居が高く
そんな素人のマネージャーは必要とされていない。
そのような会話を繰り広げているところに、
同じ学部の先輩が「サッカーサークルのマネージャー興味ない?」と
話しかけてきて、
チャラチャラしたところのない、
イケイケな感じのない、そのサークルに
あれよあれよと二人で入ることになった。
「マネージャー」とは名ばかりで、
みんながサッカーをしている横で、
マネージャー同士で話しているだけだったが、
それはそれで楽しかった。
ちなみに、サークル内で同じ学年の子と1年ほど
お付き合いをしていた。
サッカーと縁があるのかなあとその頃は思っていた。

が、社会人になってからご縁のあった人は
サッカー経験のある人はいなかったし、
夫もサッカー経験はない。
そんなもんか。そうだよな。
私自身もサッカーを特別熱心に見ている訳ではないし、
試合の応援も社会人になってからはパッタリと行かなくなった。
推しのサッカーチームがいる訳でもない。
自然とサッカーとは縁のない人生となっていた。

ところが、私の中学1年の頃から30年近く経ち、
今年、息子がサッカー部に入ることになった。
そして、月に一度ほど、
お当番で部活の練習につきそうことになった。
何の因果か、私、またもやヒト様のサッカーする様子を
ただただ眺めてるよ…としみじみ思う。

何をするでもなく、ただ、同じお当番の人と
息子の話などをしながら時を過ごす。
同じじゃん。中学生の頃とやってること、同じじゃん。

人生とは不思議なものだ。
私はすっかりサッカーから遠ざかっていたというのに。

大学生の時、同じくマネージャーをしていた子は、
サッカー経験者の夫と結婚し、子どもを3人サッカー教室に通わせてていて、
Wカップの時など、子どもたちに代表ユニフォームも揃いで着せ、家族で応援をし、元サークルのグループラインでも皆で盛り上がっていたのだが、
私はといえば、
今や韓国ドラマばかり見て、試合の話はついていけずにいた。
家族からも「元マネージャーやろ」と
揶揄われ続けるほどに、
試合を熱心に応援できず
自分の睡眠時間を優先させていた。

息子は完全に初心者であるため、
「まずは試合をテレビで見てみろ」と友人から言われたとかで、
先日は国際試合の放送を録画して、と言われた。
いや、生で見やんでいいの?と思うのだが、
息子もまだそこまでの熱は入らない様子。
ただ、友人と一緒にいるのが楽しく、
ただ友人の力になりたくて、
ただ、友人から言われると真面目にそれに答えているだけのようだ。

なんとなーくサッカーの様子を眺めているだけの中学生だったあの時から
時は流れ、
また、なんとなーくサッカーをしている様子を眺めている今。
「マネージャー」とは名ばかりで、ビブスの洗濯やお茶の用意ぐらいしか
していなかった大学生の時から月日が流れ、
またこのビブスを洗う時が来るとは…と思いながら、
寒くなってきたし、長袖のトレーニングウェアとか欲しいんじゃね?と
ポチっている今。
因果って巡るのかなあ。
私、ずーっと人のサッカーしてる様子を眺めてるじゃん、と
ふと思う今日この頃なのである。

中学生の頃、いくら熱心に眺めても
先輩は時々話しかけてはくれても、振り向いてはくれなかったように、
今、息子もいくら熱心に眺めても、
笑いかけてもくれない。
けれど、息子の様子を見ているだけでいいの、と
思っている私は30年前からいくらも成長していない。

でも、30年前、私がいてもいなくても先輩にとっては同じだっただろうが、
息子は態度では冷たくても、
試合に見にきてもらうと
なんとなく恥ずかしくても
なんとなく心強く思ってくれているように思う。

息子は別にそんなことは言わないが、
試合終了後に、部長の子が
「これからも応援に来てください」と言ったら、
「頑張れ!次も行くからな!」と拍手を送って胸を熱くしている。

30年、つかず離れずのサッカーが、
これから息子と共にもう少し足を踏み入れられるのかどうなのか…
息子はあまり母親がガツガツ入ってくるのを嫌がるので、
また曖昧に付かず離れずのような気もしているが…

息子に便乗して、自分の青春時代を思い出しつつ
甘酸っぱい気持ちを噛み締めて楽しんでいる
不埒な私なのだ。


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朝月広海
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