【読書記録】「国宝」上 青春篇

好きすぎる作家さんの一人、
吉田修一さん。
まだ上巻読み終えたばかりですが、
書きたい、感想を。

吉田さんの作品は多分全部読んだはず…と思っていたら、
今日本屋で見てみたら、
「何これ知らない…」という本が何冊かあった。
たまに大型書店に行くと新しい発見がある。
けれど、出不精の私はなかなか行動範囲が狭い。

さておき、「国宝」
吉田さん、これまでの犯罪小説とは色が違うのかな…と思ったけれど、
過去の作品を考えてみても題材はバラエティに富んでいるし、
中身も…
人間を描き出すのが、やはりうまい。

時は戦後、高度経済成長の時期。
長崎の任侠一家の一人息子として生まれた主人公。
父親が亡くなったことを機に
大阪の歌舞伎役者の家に預けられる。
そこで歌舞伎と出会い、歌舞伎の稽古にのめり込んでいく。
その家にはすでに、御曹司…一人息子がいて、
まさに後々ライバル関係になるわけだが、
その御曹司もまた気持ちのいいこ。
二人は親友になる…が、
歌舞伎役者としての才能を認められる主人公と
生まれながらの歌舞伎役者であるライバル。
血か、才能か…

『俺なんか、一本の木やねん』
『ただの一本の木やから、木を馬鹿にされたら悔しゅうなんねん。でも、自分が山やったら、木ぃ一本馬鹿にされたところで気にもせんやろ。』
『でも、俊ぼんみたいに生まれたときから丹波屋背負うてるんは、やっぱり山やねん。』

吉田さんご出身の長崎からスタートするので、長崎弁もあり、大阪が舞台になれば大阪弁。やがて東京に移り住めば標準語に…。その言葉の変化に主人公の人生の時の流れを感じる。そして、彼の人生の物悲しさを感じる。
吉田さんの作品には、いつもどこか哀愁が漂っていて、哀しくて…
優しくて、でもその優しさが、やっぱり悲しくて…
この主人公のラストがどうなっていくのか下巻も楽しみです。

あと、語り口調が、落語というのか何ていうのか分からないけれど、舞台の袖で物語を語ってる調の語り口。
『~でございます』『~しますと』というのがまた物語を盛り上げてくれる。
よし、早く下巻を読み終えよう。


#読書感想文

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朝月広海
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