『キルミーアゲイン’21』考察
『キルミーアゲイン‘21』
大千穐楽から早1か月が経とうとしているのに、いまだ私の心を捕らえて離さない『キルミーアゲイン‘21』。恐るべし。
目をつぶれば、お人魚クラブが華麗に舞い、ヤマメちゃんが歌い、無邪気にはしゃぐ吹奏楽部のメンバーの姿が蘇る。
真田くんの誕生日直前の今、まだまだ振り返るよ~
舞台は、全12場面で構成されている。
第一話:2021冬 帰郷と再会
第二話:17年前 卒業サプライズ練習 転校生加入している
第三話:2021冬 オーディション
第四話:17年前 劇団「村さ来」結成
第五話:ザ・ウルトラスペクタクル浪漫芝居。『人魚伝説』開幕。第一幕
第六話:『人魚伝説』二幕 「竜宮城」
第七話:17年前 合同稽古
第八話:2021
第九話:17年前 出会い夏 吹奏楽部とヤマメとの出会い
第十話:『人魚伝説』三幕 「お人魚クラブ」
第十一話:『人魚伝説』四幕「嵐」
第十二話:2021 さらば故郷
現代(2021年冬)と劇中劇の時間軸は通常通り進むが、17年前の場面は二話で卒業式のサプライズ練習に始まり四、七話まで進んだところで第九話では吹奏楽部のメンバーがヤマメちゃんと出会った夏に遡る。
キルミーアゲインはミステリー要素もあるよ、と前の記事で言ったが、舞台を観ていく中で浮かぶ謎は4つ。
謎①:17年前の悲劇っていったい何
謎②:17年前『舞台の上演をやめろ。もう一度悲劇が起こるぞ。人魚。』をやめろと新聞に投書したのは、誰
謎③: 現代、『ダムの建設をやめろ。悲劇が起こるぞ。人魚。』をやめろと新聞に投書したのは、誰
謎④:ヤマメちゃんって何者?
まあ、次は別にミステリー要素には入らないかもしれないけど不思議ポイントとして
藪中ってなんでそんなに人気あるの?
正直、卑怯者藪中がモテまくる意味が分からない。
顔?田舎レベルのイケメンなのか。
これから検証していきたい。
藪中のことを好きな人物から上げていこうか。
1.ジャッキー
吹奏楽部の副部長。ずっと好きだった部長の藪中が、夏に急に部活を辞め演劇部に転部したことを気にかけている。
2.イボイノシシ
相撲部だが、藪中と一緒に過ごしたくて、吹奏楽部と演劇部のコラボに参加したい気持ちを示すも無下に断られる。卒業後ダイエットをして'ミスたにし'に選ばれ、『人魚伝説』のオーディションで当時藪中が好きだったことを告白。
3.ヤマメちゃん
藪中に命を助けられた謎の女の子。ダム工事に反対して父がヤマメを道連れに身投げし、岸に打ち上げられたところを藪中に助けられる。
4.山根
藪中の一つ下で「劇団村さ来」の団員。戦隊モノ「帰国子女戦隊モテンジャー」の担当カラーは茶色。舞台を途中で投げ出して故郷に帰ってしまった座長藪中に代わって借金を返済するだけでなく藪中を連れ戻しにやって来るこのしつこさ。ただの後輩の感情とは思えない。もしかしてゲイかな?って。
藪中自身は、3年の文化祭で演劇部による舞台『もう一度殺してちょんまげ』で初舞台を踏み、「舞台上で斬られて起き上がってみると、「藪中くんすげー!」とみんなの見る目が変わってた。生まれ変わった気がしたよ。」と発言しており、それから殺され役が癖になったと言っている。
じゃあ藪中の人気って3年生で演じた舞台がきっかけで火が付いた?
いやそんなことはないだろう。ジャッキーが恋心募らせていたらしいし。自覚のないタイプのモテ男か。
それか、卑怯者の自覚はずっとあり、自己肯定感が低かったけど、演劇部にの舞台で主役級の役をやり遂げたことでやっと周りの評価に見合う自分になれた気がしたのか。
・・・これはあり得る。
謎に戻る。
舞台は第六話の終わり、
「舞台の上演をやめろ。もう一度悲劇が起こるぞ。人魚」
という投書をヤマメが新聞を広げて皆がのぞき込んでいる舞台稽古中の場面から、17年前の劇団村さ来と吹奏楽部の合同稽古の場面にジャンプする。
「ダムの建設をやめろ。悲劇が起こるぞ。人魚」
ヤマメが新聞を広げて皆でのぞき込む構図は全く同じ。
いつの間にか17年前を示す学生アイテムを装着している村さ来の4人と、いつの間にか揃う吹奏楽部のメンバー。
変わっていないのは、ヤマメちゃんだけ。この演出素晴らしかった。
で、17年前も、現代も、投書したのいったい誰?
謎②が明らかになるのは、第八話。
ヤマメが実は17年前の投書は自分がやったのだと藪中に打ち明ける。
「せっかく友達ができたのに、村がなくなるなんて許せなくて。」がその理由。
どうしてもダム建設を止めたかったらしい。
でも、今回の投書は自分がやったのではないと。
それ以外の謎は、第十一話の『人魚伝説』四幕の中でようやく明らかになる。
卒業式前日。嵐の夜。舞台はたにし座。そこでいったい何が起きたのか。
反対運動も空しくダム工事は始まった。藪中は、俺は俺にできることをやらなきゃと思って、無性に太鼓が叩きたくなって、嵐に負けない音を出してやりたいと、太鼓を引きずりながらたにし座に行く。いやよくわからない。
大蔵は、旗揚げ公演の演出を考えたくて、たにし座のおやじに頼んで開けてもらっていた。そして「劇団村さ来」決起集会のため、山根を呼び出す。
河本は、舞台監督のため大蔵に呼ばれてたにし座にやってきた。からの、ジャッキーの家へ告白しに向かう。青春。
ヤマメは、たにし座で太鼓を叩く藪中を見て、吹奏楽部のメンバーを呼び集めた。
「嵐の夜」「卒業式前日」このシチュエーションを利用して告白する強者がもう一人いた。ジャッキーは藪中に告白する。
が、そこで初めて、藪中が実は夏にハルカ先生に告白していたことを白状する。
え?いやいやハルカ先生に抜け駆けしたら、
「村八分にして、
電柱に括り付けて、
通りすがりの村人にちょっとずつ殴らせて、
最終最後ハゲタカの餌にされる」
ほどの罪だよ?
ハルカ先生目当てに入部したロック好きな転校生がそうやって脅されてたじゃん。
しかも藪中「振られちゃって気まずくなって、吹奏楽部やめたの!!!!」
は?
告白した理由も、「真夏のハルカ先生、ノースリーブなんだもん!」
え?いや、藪中お前・・・いくら高校生だからって性欲に正直すぎ。
第七話で演劇部をやめた理由を追及されたときは、
「嫌になったんだ!太鼓は馬鹿みたいに重いし、お前らは吹奏楽部「命」って感じで重たいし、ガキだし。文化祭で劇やって俺は生まれ変わったの。もう住む世界が違うわけ!」
って言ってなかった?
あれ嘘?
自分守るために吹奏楽部をバカにして。おま、さいてーじゃん。
ハルカ先生本人に卒業式で吹奏楽部がサプライズしようとしていることをチクったしな。もはや藪中がヤバすぎて怖くなってくる。
ここでそれぞれの理由でたにし座を去る村さ来のメンバー。
呆気にとられる吹奏楽部の面々を置いて脚本書いてくる~と言ってトンズラする通常営業の藪中。
吹奏楽部も揃ったことだし、いったん中止したけど明日やっぱり出し物やることにするか!早速練習な!とたにし座の親父に許可を取りに出て行く勝手極まりない通常営業の大蔵。
大蔵に衣装と小道具持って来いと雑な扱いをされる通常営業の山根。
大蔵に藪本を呼び戻してこいと言われた河本は、ジャッキーが藪中に告った現場を見てしまいショックから立ち直れない。
しかし4人がその後たにし座に戻ることはなかった。
残される吹奏楽部員7人+ヤマメちゃん。
嵐が強まり帰宅することも、電話も故障のため連絡することもできない7人は、ハルカ先生に抜け駆けしてクラブを辞めたケンちゃん(藪中)を許そうと話し始める。
夢見て東京へ行こうとしている劇団村さ来とケンちゃんの未来、応援してやろうぜ!と、戻ってきたらサプライズ演奏をして迎えてあげようと練習を始める。
いや吹奏楽部のメンバーいい子過ぎる。藪中とは雲泥の差。
そんな矢先、地鳴りのような轟音が聞こえ、鉄砲水に飲まれ吹奏楽部員7人は全員亡くなる。
これが、謎①17年前の悲劇だ。
翌日、藪中は7人が亡くなったと聞いても、物語の中の出来事だと逃げ込んで真実から逃げ、他の関係者も、7人を見殺しにした罪悪感に苛まれながら生きていた。
ここに帰って来さえすれば自分が取り戻せると思っていた藪中。でも思い出されるのは逃げた自分で、傷つきたくなくて吹奏楽部の連中に友達じゃないと嘘をついたことへの後悔だった。
藪中は、17年前の悲劇を、誰もが笑って報われる喜劇にしようと提案する。
17年前に止まった時計を、心を、『人魚伝説』でもう一度動かそう!と。
ヤマメちゃんも、実際には叶わなかった卒業式をここでやろう!と発案する。
亡くなった吹奏楽部のメンバーと元劇団村さ来による時空を超えたコラボが始まる。
いや~、タテタカコさんの歌が素晴らしい。
やっと17年前の悲劇に向き合う事ができた村の人々。
藪中が再び吹奏楽部の一員として太鼓を叩く。
ハルカ先生へのメッセージ。
毎回涙なくして見られない感動の場面。
しかしたにし座の座長に遮られる。
ここで、謎③の新聞に投書を送り、舞台『人魚伝説』の邪魔をしていたのは、たにし座の座長だったことが明らかになる。
現座長は、悲劇の象徴として残されたたにし座で公演することがずっと苦痛だったことを告白する。
舞台を壊そうと座長が暴れる中、劣化したたにし座の材木が倒れ、藪中が下敷きになりそうになる。
藪中を庇うヤマメちゃん。
その瞬間、ヤマメは泡となって消えてしまう。
謎④ヤマメちゃんは、人魚だった!
いやごめん、そこはわかりやすかった。
何度も、「人間になりたい」わざわざ言ってたし、二回も死に損なってるしね。
人魚は、川に身投げしようと鉄砲水に襲われようと死なないらしい。
ただ、材木の下敷きになるとさすがに死ぬ。じゃなくて消える。
ただ泡となって消えるだけじゃなく皆の記憶からも消えてしまう。
謎のおまけに付け加えたい、藪中のラストの表情。決して晴れやかではなかったよね。
毎回、たにし座を切なそうに見つめ、ふうっとため息をついてから、村を去る。←ここの真田くんの演技、好きだった。
ためいきの理由とは何だろう。単純にたにし座が失われるから?
亡くなった7人の無念を思って?
それともヤマメちゃんが泡となって消えちゃったから?
まあ真実は、藪の中ってとこ?
そしてさ、みなそれぞれがあの時ああしていれば・・・って17年間罪悪感を抱えながら生きてきたわけだけど、
いや、ぶっちゃけ、
嵐の夜、いくら藪中を仲直りさせたいからといって、ヤマメが吹奏楽部のメンバー呼び集めなければ、みんな死ななかったよね?
大きな声じゃ言えないけど。
17年前の悲劇、全部ヤマメちゃんのせいじゃない??
次回は、人魚伝説と藪中の人物像についてまだ語りたい。
いやまだ続くのか。
~おまけのおまけ~
17年前、高校生の間で、
「興奮してウンコ漏れそうだ~」
「チンコ立ちそうだ~」
ってギャグ、流行ってたの?
この村限定?
ジャッキーも言ってるけど、
無駄な下ネタはやめて!