映画『パリタクシー』『フレンチアルプスで起きたこと』感想

 先日パリに行ったせいか、フランス関連のタイトルに惹かれてこの2作品を鑑賞。



01:パリタクシー

2022年製作
監督:クリスチャン・カリオン

【あらすじ】

 主人公のタクシー運転手が乗せた客は、90を超える老婦人だった。行先はパリを横断するほどの長距離。最初は不愛想に応じていた運転手だったが、婦人のおしゃべりに引き込まれ思い出の地を共に寄り道していくうちに打ち解けていく。一日かかってようやく最終目的地の老人ホームに送り届けるころには、婦人に夕食をご馳走したくなり、タクシー料金を受け取ることさえ忘れて去る。たったひとつの出会いがもたらす奇跡の物語。

【感想】

 人生経験豊富な老婦人の言葉のひとつひとつが心に響く。うだつのあがらないタクシー運転手の人生をたった一日で変えてしまう人間力に感銘を受ける。特に「笑うと一才若返り、怒った顔をしていると一才老ける」はいい教訓となった。ストーリーも面白く、背景に映るパリの街並みも楽しめて一度の鑑賞で二度美味しい。ひとりの天使に出会うことで人生は180度変わることもあるかもしれない。


02:フレンチアルプスで起きたこと

2014年製作
監督:リューベン・オストルンド

【あらすじ】

 フレンチアルプスのスキーリゾートを訪れていたた4人家族がレストランのテラスで食事中、雪崩に襲われる。被害はなかったが、家族を置いて我先に一人で逃げ出した夫の姿を目の当たりにして妻がドン引き。その後の休暇がずっとぎくしゃくしてしまう話。

【感想】

 一面真っ白の雪山の景色がとにかくきれいで、サラサラのパウダースノーを滑り下りてくる様子を見ているだけで爽快な気分になる。子供が生まれると、このような危険なコースではなくファミリーコースで滑らなくてはならなかったり、必然的にいつも子供を最優先に気に掛けて過ごさなくてはならなくなる。自由気ままに行動できないやるせなさが夫婦それぞれに募っている様子が窺える。そんな中、夫の本質が思いがけなく露わになってしまい、何とか誤魔化そうと必死になる夫が滑稽だし、いつまでもこだわる妻にも同情する。下手をすれば離婚に発展するほどシリアスな問題だ。子供の前では円満を装い夫婦間で何とかわだかまりを解消しようと努力する二人が、家族間だからこそ見せる部屋着で、子供に聞かぬようにと小声で話し合う姿がいじらしい。妻が友人にも夫の行動を愚痴ったことで、友達カップルにも不穏な空気が影響していく様も面白い。
 アルプスの広大な白銀の世界とは正反対に、家族やカップルの小競り合いはなんてちまちましているのだろうか。家族と離れ男同士で居ると女子にモテるのかと有頂天になったらただの勘違いだったり、パパや夫、ママや妻として家族を守る立場になっても人間は滑稽で小さい。辛辣なコメディとして面白かった。しかしただひとつ気にかかることが。やたらトイレしてる場面が出てくるのだ。尿が放出されている音や姿なんて不快でしかない。ストーリーに全く関係ないこういう場面をいちいち入れたがるくらいだから監督は男性なのだろうなと思って調べてみて、やっぱり!って納得するまで気持ち悪い。趣味が悪いよ。
 冒頭から子供の立ちションシーンだし、妻は雪山でいきなりしゃがみこむし、夫婦はぎくしゃくしていてもバスルームは同時に使用していて、どちらかが洗面台を使用している時に後ろで用を足している。こんなキモ排泄場面さえ差し挟まれていなければ、文句なしで面白い!で終われた映画なのに~。残念である。


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