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電熱器
♪春のこもれ陽の中で♪
ラジオから森田童子「ぼくたちの失敗」が流れてきた。
いまにも消えそうな、ささやくような歌声。
♪ストーブ代わりの電熱器 赤く燃えていた♪
貧乏学生だったあの頃。
木造モルタルアパート「富士見荘」の2階。(富士山が見えるわけではない)
風呂なし、台所・トイレ共用の四畳半一間。
窓を開けると、目の前に大家さんの庭の柿の木。(どれも渋かった)
朝、電熱器でお湯を沸かし、コーヒーを作る。
食パンを乗せる。余熱でトーストを作るのだ。
新聞を開き一面見出しを追い、「余録」を読みながら、食パンをひっくり返す。
コイルの模様がくっきりと焦茶色だ。
ある時、思いついた。
ボンカレーを温めたお湯で、コーヒーを作ってみようかしら。
電気代節約。
「うええ」
激マズだった。
学生運動の挫折を歌ったとも言われる「ぼくたちの失敗」。
これは、取るに足らないトホホな「わたくしの失敗」。
【参考】
・森田童子「ぼくたちの失敗」(1976、ドラマ「高校教師」1993主題歌)
※写真はウィキペディアより