「春にして君を離れ」アガサ・クリスティ 第2章
「春にして君を離れ」アガサ・クリスティ 第2章
“Absent in the Spring” by Agatha Christie
https://www.pdfdrive.com/absent-in-the-spring-e199881914.html
Chapter 2
次の朝、ジョーンはツアーバスで次の駅テルアブハミドに向かいます。
その駅から南に向かうお客は彼女だけです。
途中で、雨のなか、ぬかるみに車をとられながら、最初のワディ(雨期以外は水のない川)を渡ったところで、レストハウスのマネージャーが渡してくれたお弁当を食べ、旅を続けます。
途中で2台の車とすれ違い情報交換する。
第二 (これが最後) のワディに来たときはもう夕方でした。
結局、車が駅に着いたのは、午後8時30分発予定の汽車がとっくに出発した後の10時15分でした。
駅の食堂室に入り、お茶を飲み、部屋に下がり、疲れ果ててぐっすり眠りました。
次の朝、9時半に起き、食堂で朝食をとり、1時半に昼食を予約して、次の朝汽車が来ることを確認する。
外で手紙を書こうと思い立ち、駅とは反対の方へ歩きはじめる。
気持ちの良い日差しの中を散歩しながら、夫の事を考える。
ロドニーは市場に面した自室の窓のところに立って牛の市を眺めているだろう。
「ガルブレイスのセントラルヒーティングの修理見積もり高いんだと思うんだけど、テャンバレンの見積もりも見られるかしら」
彼は上の空で、「別の見積もりもとってもいいけど、高いと思うよ」と言う。
彼女は、夫のこのぼんやりさに、イラつくのだ。
そうだわ、今日は牛の市の日じゃなかった。
思いは、夫が叔父さんの申し出を受けたときの事に遡る。
叔父さんが「一緒に弁護士事務所をやらないか」と持ち掛けたとき、彼は「僕は弁護士の仕事は嫌いなんだよ、ぼくは牧場をやりたいんだよ。」
あの時、断固とした態度で「おじさんと一緒に事務所をやりなさい」と言ったとき、彼は悲しそうな顔をしていたけど、私の現実的判断は正しかったんだわ、男には夢を追いかけて人生をダメにしてしまうものだから。
腕時計を見ると10時30分だ。
ゆっくり地面にかがんで、バッグを開けて紙と万年筆を取り出し書き始めた。
第3章 ⇒ https://note.com/minamihamaryu/n/n32a64026dd42