“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (108)
“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (108)
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外の雪の中で、暗闇でなく犬の声を聞きながら、彼の左の靴は水が入って不快で、チェチェンの山の中に戻ったような気がして、参加しなかった戦争、しかしそれぞれのそこでの生活の中で戦った戦争、から帰っていたような気がした。
ミーシャとヴィクトルは、遠いようでそうでもないこの戦争に参加できなかった、社会から拒絶された退役軍人のようだった。
突然、思い出せる限り初めて、彼の哀れみはミーシャにだけ向けたものであったものが、自分自身にも向けられた。
彼はミーシャをモスクワとチェチェンへ送ってしまった自分に対するおなじみの罪悪感をも思い出した。
他の誰もが、その罪悪感を償い、すべてを忘れて、自分の人生を歩み、多くの人に与えられているささやかな幸せ、悲しみ、愛、そして豊かな自由な時間を求めていただろう。
彼が他の誰でもなかったことを除けば。
最後のコニャックを注ぎ、飲んで、突然リョーシャの事を考え、彼の昔のベンツに何が起こったのだろうと思った。
窓を叩く音を聞いて、振り向いてニーナを見た。
「凍え死んじゃうわよ!」と彼女は叫んだ。
濡れた靴の雪を払って、まだ犬を探しているミーシャを残して、部屋に入って、バルコニーのドアを閉めた。
犬の鳴き声は止んでいた。
「マヨネーズ無くなったわ」とニーナが不平を言い、ヴィクトルはいそいそと履物を変えて、暖かい服を着て、まだ開いている、みんなが酒を買う無人食料品店へ行った。
誰かが電話を掛けてきて、10分後にまた電話するって言っていたわ、と帰り道で彼女が言った。
アンドレイ・パブロビッチに違いないと、彼は確信した。
9時にソニヤが友達のところから帰って来て、プレゼントが無いかツリーを調べて、何もない事に落胆する事も無く、台所の手伝いを買って出て、事態は順調に進んでいった。
ヴィクトルは彼女にテレビでディズニーのマンガを見せて、居間のテーブルの周りにもっとスペースを作る為にリョーシャのベッド兼椅子を壁際に動かして、ニーナがテーブルを置くのを手伝った。
10:30、バルコニーを離れる事を嫌がったミーシャを除いて、彼らはテーブルにやってきた。
ソニヤはあくびをしていたが眠らないように我慢していた。
ニーナはフィズをグラスいっぱい注ぎ、焼け具合をチェックし、おいしそうな匂いで満ちていた。
「あと20分はかかるわね」と、振り返って宣言し戻ってきた。
「モスクワTVにチャンエルを変えて、それに合わせて乾杯をしようぜ」と、リョーシャがロシア製のピンクシャンペンの大瓶を見ながら提案した。
ヴィクトルがチャンネルを変えると、エリツィンが「親愛なるロシア人」に呂律の怪しい新年の挨拶をしていた。
「音を消してくれ」と、リョーシャが頼んだ。
ヴィクトルがそうして、クレムリンの乾杯の時間に合わせて乾杯する時だけ音を戻した。