“Girl With a Pearl Earring” by Tracy Chevalier (245)
“Girl With a Pearl Earring” by Tracy Chevalier (245)
カタリーナに私の小さな声が聞こえたとは思えなかった。
彼女の心はどこか別の所にあった。
彼女はまたブラシを取りだしブラシに付いた毛に指を通した。
「私たちがこの状態になったのはフランスとの戦争の為なの。
そのため、ファン・ライフェンでさえ絵を買いたがらなくなったの。
そして私の母は家賃を集めるのに苦労するようになったの。
そして彼は彼の母親の宿屋のローンを引き継がなければならなくなったの。
だから、物事がとても難しくなったのは驚くにはあたらないのよ。」
私が最後にカタリーナに期待したのは、何故彼女たちが借金するまでになってしまったかの説明だった。
結局今の15ギルダー(1000円程)はそれほどの多額ではないです、と、私は言いたかった。
ピーターはそれを放っておいてくれます。
もうそれについてそれ以上考えていません。
しかし私はあえて彼女の話に口を挟まなかった。
「それに加えて、子供たちがいるでしょ。
11人の子供たちがどれほどパンを食べるか知っていますか?」
彼女は私をちらっと見て、それから化粧ブラシに目を落とした。
一枚の絵は3年以上の価値があります、と私はそっと答えた。
一枚のとても立派な絵は、同情的なパン屋にとって。
廊下でタイルのカチッという音と、ドレスを手で押さえる音が聞こえた。
コーネリアはまだ秘かに見張っているんだ、と私は思った。
彼女もそのドラマに参加しているのだ。
私は自分の聞きたい質問を押しとどめて待った。
ファン・レーベンフックがついにしゃべった。
「グリエット、一つの遺書が作成された場合、」と、彼は深みのある声で話しはじめ、「借金を考慮しながら資産を確定するために、家族の所有物の目録が作成されなければなりません。
しかし、それがなされる前に、カタリーナが対処したがっている私的な事柄があります。」
彼はカタリーナをちらっと見た。
彼女は化粧ブラシを持て遊んでいた。
彼らは未だにお互いを好きではないのだろう、と私は思った。