“Christmas” By Vladimir Nabokov (2)

“Christmas” By Vladimir Nabokov (2)
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スレプトフは膝から手をあげてそれをゆっくり見た。
ロウソクの蝋が指と指の間の皮膚の薄い皺の中に付いて固まっていた。
指を広げると白い塊が割れた。

彼の悲しみとは全く関係のない無意味なばらばらの夢の中で過ごした夜の翌朝、スレプトフが冷たいベランダに出ると、足元で床板が陽気なピストルの音を発し、色とりどりの窓ガラスの反射が漆喰の緩衝材の無い窓の下の部分の上に天国の様なひし形を作っていた。
まず外のドアがなかなか開かず、その官能的な音をたてて開き、キラキラ輝く霜が彼の顔に降りかかった。
赤っぽい砂が氷で覆われたベランダの階段に少しだけシナモンのように散らばっていて、ひさしからは緑青色の厚いツララが垂れ下がっていた。
雪の吹き溜まりは別棟の窓までずっと続いていて、しっかりとそれらの凍った手で小さな木製の構造物を掴んでいた。
夏には花壇だった黄白色の盛り土はベランダの前の雪の高さより少しだけ高くなっていて、そのずっと先には全ての枝が銀色に縁取りをされて、モミの木が明るい膨らんだ雪を乗せて緑の枝を垂らしている公園の輝きが迫っていた。

スレプトフは、フェルトの長靴を履いてカラクル羊の襟の付いた短い毛皮の付いたコートを着て、ゆっくりと唯一の雪かきされた、まっすぐな道に沿ってその眩しい遠くの景色へと足を踏み出した。
彼はまだ生きていて、雪の美しさを感じ、彼の前歯が寒さに痛くなるのを感じられる事に驚きを覚えた。
彼は雪をかぶった藪が泉に似ていて、犬が雪の吹き溜まりの斜面にサフランの花の足型をつけて、それが地面を露出させているのに気が付いた。
その少し先で、歩道橋の支柱が雪から突き出ていて、そこでスレプトフは立ち止まった。
彼は、怒って、苦々しく、フワフワと厚く積もった雪を欄干から払い落した。
彼はこの橋が夏にはどんな風に見えていたのかをはっきりと思いだしていた。
そこには花が散って滑りやすい厚板に沿って歩いて、手すりにとまった蝶を網で捕まえている彼の息子がいた。
少年は今父を見ている。
太陽に焼けた茶色の麦わら帽子のつばの下の少年の顔には今や永遠に失われてしまった笑顔が絶えない。
彼の手はベルトに着けた皮の財布の鎖を弄び、サージ地の半ズボンの中の日焼けした脚と濡れたサンダルはいつもの陽気な姿勢をとっている。
つい最近、ペテルブルクで、学校や、自転車や、大きな東洋の蛾について狂乱の中で大声でしゃべった後、彼は死んだのだった。
そして昨日スレプトフは棺を受け取って、一生分の重さもあろうかと言う棺を、田舎へ運び、村の教会の近くの家族用の墓所に入れたのだった。


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