“The Cat's Table” by Michael Ondaatje (6)
“The Cat's Table” by Michael Ondaatje (6)
(6)
ラマディンは僕たちが犬を持ち込んだことで、彼が死ぬのは運命だったのだと言った。
その小さな生き物は二度と見つからず、僕たちが犬を持ち込んだこと自体が錯覚だったと言う結論に達した。
昼食の時、ほとんどの質問は犬がどんな風にして船に持ち込まれたのかと言う事だった。
そしてその犬は今どこにいるのかとう事。
エミリーが僕たちのテーブルにやって来て、犬を持ち込んだかどうかを知りたがった。
僕たちがそんな怖い事は全然してないよ、と言うと、笑っていた。
その犬の事に興味を示さなかったのはマザッパさんだけだった。
マザッパさんは自分のオックステールスープについてずっと考えていた。
彼の指は、今回だけはテーブルクロスの上に留まっていた。
次の朝、いつもの、友達に会いたいという思いを持ってではなく、目を覚ました。
いつものラマディンのドアを叩く音を聞いたが、返事をしなかった。
その代わり、身支度をするのに時間をかけて、一人でデッキに出た。
船の反対側では、双眼鏡を持った乗客たちが、陸地の向こうのナイル川を見ようとしていた。
乗客はみんな大人で、僕の知っている顔は誰もいなかった。
僕は、エミリーの船室に行った。
僕は他人といないときはエミリーといるのが一番好きだった。
そんなとき、ぼくは多くの事を彼女から学んだ。
何度かドアを叩くと、部屋着を着た彼女はドアを開けてくれた。
「入っていい?」「どうぞ」
エミリーは大股で歩いて、シーツにもぐりこみ、ローブを脱ぎすてた。
「僕らはまだ紅海にいる」「知ってるよ」
「ジッダを通ったのを見たよ」
僕は朝の間ずっと彼女と一緒にいた。
僕たちがどんな風にして犬を持ち込んだのか話した。
彼女が僕に近づいて僕の顔を彼女のほうにむけたとき、僕は彼女の火の付いていない煙草を吸っているふりをしながら、彼女のとなりでベッドで横になっていた。
彼女は言った、「私に今言った、この事を他の人には言わないことね。」
「僕たちはそれは犬の幽霊だったと思うんだ」と答えた。
「その呪いの幽霊」
「どうでもいいわ、もうその事を私に言わないで、いいわね。」
僕は、言わないよ、と言った。
彼女は心配しないで、そんなことは忘れなさいとでもいうかのように、僕の頭に触れた。
僕は彼女を見続けた。
「何?」彼女は眉を吊り上げた。
「僕は分からない、変な感じだよ。ここにいるってことが。イギリスに行ったら僕には何が起きるんだろう。一緒にいてくれる?」
「できっこないってわかっているでしょ」
「僕にはイギリスに知り合いがいないんだよ」
「あなたのお母さんは?」
「君を知っているほどお母さんを知っているわけじゃない」
「いいえ、知っているわ」
彼女はかがんで僕にキスをした。
「さあ、私にコーヒーを作ってちょうだい。そこにカップがあるわ。お湯は蛇口をひねると出るから。」
僕は立ち上がって周りを見回した。
「ここには珈琲は無いよ」
「じゃあ、頼んで」
客室係が彼女の部屋に来たとき、ドアのところでトレーを受け取って彼女に持って行った。
彼女は半分立ち上がって、ローブの事を思い出してそれを取ろうとした。
しかし、僕が見たものは僕の心を打った。