“The Woman” by Doris Lessing (12)
“The Woman” by Doris Lessing (12)
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「まあ、女性は、分かるでしょう? 18歳では、勿論25歳でも・・」
ヘル・ショルツは肩をすくめ、より声を荒げて言った。
ここで彼の相手に向かって優しく微笑んで「多分25歳でも、それを自分だけに起こった奇跡だと受け取ります。
しかし私たちの齢では?」
彼はあたかも大尉が彼の落ち着きを取りもどすかもしれないと言う希望に抗いたいとでもいうかのように、話すのを止めた。
しかし、大尉には言葉が無かった。
「いいですか、私の友人よ、」と、ヘル・ショルツ上機嫌で話を続けながら、「もう一度言いますが、私は必死で、気が狂うかもしれないと思いました。
私は自分を撃ち殺そうと思いました。
私はたまたま行った全ての町の通りを走り回り、全ての顔を覗きこみました。
私は新聞の写真、女優、社会的な女性を見ました。私が通りでちらりと見た女性が例の彼女なのかもしれないと思い、ついて行ったものです。
でも、結局違いました。」と、ヘル・ショルツはテーブルに手を置いて、芝居掛かって言ったので、指輪がもう一度カチッと鳴りました。
「いいえ、私は決して成功しませんでした。」
「彼女はどんな格好をしていたのですか?」と大尉は動揺して英語で聞いた。
彼の不安げな眼はヘル・ショルツの大変イラついた眼をさがしていた。
ヘル・ショルツは自分の椅子を少し後ろにひいて、ローザを見て、ドイツ語で大きな声で言った。
「そう、前にも言ったように、彼女は美しかった。」
と言って考えるように言葉を切った。
「それに彼女は貴族だった。」
「そうだそうだ」と大尉は待ちきれず言った。
「彼女は背が高く、大変痩せていて、美しい体型で、そう、美しい!
黒い髪をしていて、分かるでしょう、黒、黒だ!
そして黒い瞳で美しい歯。」
彼は大きな声で意思悪そうにローザに向かって「彼女は決して、田舎娘のタイプじゃなかった、決して。そんな娘が好みのやつもいるけど」と言った。