“Writing Box” by Milorad Pavic (60)
“Writing Box” by Milorad Pavic (60)
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私はその時は何も疑わなかった。
しかし、わかるでしょう、その事は私が甘いもの、男性用香水「ヴァン・クリーフ」、秋のネバネバしたブドウと春の鳥がつついたサクランボなど、だけが好きだった年だった。
一月までには既に私は落ちる前に落下物を掴めるようになっていて、私は成長し遂にあれがやれたので幸せだった。
私はそのメモを機械的にポケットに突っ込み、いつものようにギターを取り階段を下りて行った。
何かがしつこく私の頭に浮かんでいた。
私は日焼けしていた、背丈も適切だしその他の特徴も広告に有った通りだった。
私が広告に弱いって言うことはあなたも知っているでしょう。
それに、私のネズミ捕りはいつも私より早いのだ。
またしてそれは既に知っていた。
いつものようにそれは常に私より前に全てを知っていた。
事前に。
朝だった。
門を開けた時、家の前にはもはや通りはなかった。
冬のサーカス(冬季にサーカスが行われる建物)からセーヌ川に向かって霧が流れていて、日陰と日向に分かれている。
その朝、私の通りは消えてしまっていて、太陽は全ての季節を通り過ぎて霧の間から登って来ていた。
ちょうどその時、96番のバスが霧の中から現れた。
それはバス停から私の家の前にゆっくりと動いていた。
各停留所の名前はその乗り物の側面に書かれていた。
ポルト・デ・リラ – ピレネー –レピュブリック – フィーユ・デュ・セーヌ –
トゥレンヌ – オテル・ド・ヴィル –サンミッシェル – モンパルナス駅。
バスは私の前に止まり、ドアがゆっくりと開いた。
まるで私を誘うかのように。
その誘惑には抗しがたかった。