“Writing Box” by Milorad Pavic (最終回)
“Writing Box” by Milorad Pavic (91)
https://jp1lib.org/book/16698678/7e0b66
「それはあなたの物です、M様。
私が余分にいただいた分です。ちょっと借りただけです。
今や私は借りを返したので、私たちは対等です・・・。」
私の顔に驚きを認めて、スタブラは付け加えた。
「あなたが今何を考えているのか私に言ってほしいですか、M様?
あなたはこれで私から金を巻き上げた、と思っていらっしゃる。
そうではないですか?」
「そうだ、スタブラ、まさにそう思っていたよ。」
「もう一度言いますが、そうじゃないんです。」
「じゃあどういう事なんだ、スタブラ?」
「ちょっと前に小さな子供を連れたご婦人が、あの船の難破について尋ねて、コトルにいらっしゃいました。
外国人で若いのに白髪で、私はフランス人のかただと思いました。
彼女は私たちの言葉は一言もご存じではなく;フランス語もご存じではなかったら、モーとかメーと言うしかなかったでしょう。
彼らは一人の通訳を連れた彼女を私の所に連れて来ました。
彼女は彼女の夢の中に降りてくる鳥たちについて不平を言い、その箱を500マルクで買ってくれました。」
「それじゃなぜおまえはその箱を彼女に売らなかったんだね?」
「彼女はその箱を買うためにお金を払ったんじゃなく、あなたにその筆箱を渡してほしためにお金を払ったのです。」
「彼女が僕にその箱を渡してほしくてお金を払った、だって?」
「はい、彼女は箱の以前の所有者があなたの事を知っているとおっしゃいました。」
「それでお前はどうしたんだ、スタブラ?」
「私はお金を受け取って、約束したのにあなたに箱を渡すができませんでした。」
「何故?」
「あなたが既にその箱を持っていたからです。
私はすでにそれをあなたに売ってしまっていたのです。
今、私はあなたにご婦人のお金をお返ししています。」
「しかし違う2つの世界からやってきた2人が私をそれの買い手としてえらんだのかね?」
「どのようにして選んだのかと言う意味ですか、M様?
私たちにはあなたが考えていることが分かります。」
「私は何を考えているかね、スタブラ?」
スタブラの顔の笑顔はまたしても変わった。
彼が次のように言った時、男らしい若い笑顔と年をとった女性的なそれの代わりに、第三の中性的な笑顔が顔に現れた。:
「この箱のことを何か書こうと思っているいらっしゃると思っていますので・・・。」