“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (50)
“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (50)
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最初はロシア語の、その後は理解できないチェチェン語の会話が聞こえている、深い眠りには程遠い眠りの夢の中で、彼はヨットに乗って海に出て、微かな風にやさしく揺られていた。
突然、風が強くなり、帆がいっぱいに広がり、船が急に傾き、前の座席に(その時それがバスの前の座席だと気が付いたのだが)放り出された。
バスがブレーキをかけたのだった。
カラシニコフを持った男はいなくなっていた。
レズバンと運転していた彼の仲間だけが座席で話をしていた。
ロシア人の運転手はもういなかった。
森を通っている未舗装の道路はとても車が通れるようなものではなかったが、驚いたことに、ミニバスは時折喘ぎ声をあげながらも、無理やり登って行った。
辺りは明るくなっていた。
どこか山の深い森の斜面の上で太陽が輝き、地面まで届いた光の一部がよりまぶしく感じられた。
少しの間道は平らになり、運転手が安どのため息をつき、車を止めて時計を見た。
レズバンがトランシーバーをとって、何か話しかけて、待って、無機質な返事を受け取って、運転手に向かって頷き、乗客に話しかけた。
「目隠しをするか、睡眠薬入りのお茶にするか、どちらにする?
もし、国家緊急サービス職員に捕まった場合、どの木か切株を通ったか思い出す事に頭を悩ます必要がなくなる。」
さまざまな意見が出されたが、睡眠薬の方は全員一致で却下された。
レズバンはにやりと笑った。
「同じ様に、キットを隣の席の人に付けろ。」
運転手が、お互いにズルしないで付けろよ、といいながら、黒い目隠しを配った。
ヴィクトルはマトヴェイ・ヴァシリエヴィチにつけてやり、自分でも付けた。
ミニバスは再び走り出した。