“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (19)
“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (19)
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21
ヴィクトルは上手くやったもんだ、ご褒美が欲しいくらいだ、と思いながら帰ってくるとすぐ、アンドレイ・パブロビッチとパーシャと一緒に4x4に乗っていた。
アンドレイ・パブロビッチが突然「止めろ!」と命じた。
車を止めたのはかつてヴィクトルがミーシャを譲り受けた動物園の入り口だった。
「選挙に勝つにはもっと別の公約が必要だな」
アンドレイ・パブロビッチはヴィクトルに100ドル札の束を手渡しながら、「車を出せ、パーシャ」と言った。
「どこへ?」
「ダンプだ、負傷した退役軍人たちはどうだ?」
「金がかかるか?」
「背の低いビリヤード台が欲しいと言っています」
「俺のやつがそろそろ買い替えの時期だから、脚を切って」
ダンプはプッシャ・ベラベジュスカヤ通りの奥の私有地にあった。
上に有刺鉄線の付いた背の高い鉄の壁に囲まれた、明るい窓のあるブロックづくりの三階建ての建物と金属の格納庫があった。
戦闘服の男がゲートを開け、インターホンで中の人に彼らの到着を知らせた。
金属のドアが音をたてて開いて、3人の迷彩服に迎えられた。
アンドレイ・パブロビッチが低い声で呼び出されて、5分後に急な階段を降りて両側にさびたドアが規則的に配置された広い明るい回廊に行った。
「最初は誰ですか」
「双子だ」とアンドレイ・パブロビッチは言った。
パーシャを残してアンドレイ・パブロビッチとヴィクトルは2つの木製のベンチとテーブルと汚物バケツのある独房に入った。
手錠をかけられて、明らかにドアの騒音で眠らせないようにされた、双子が立っていた。
「で、俺の籠の鳥たちはどうだい?不満があるか?」アンドレイ・パブロビッチが聞いた。
彼らは首を振った。
「サウナで話していたのは誰だ?」
「僕たちは知りません、ゾーラは知っています。」
「じゃあ、彼に聞いてみよう」
隣の部屋に、殴られて鎖につながれたゾーラがいた。
アンドレイ・パブロビッチが彼の前にしゃがみ込んで、「サウナで誰と話したのか覚えているか?」
「日当50ドルは安い、充分カタツムリの法則違反だ。名前を言わないのはもっと悪い」
「カタツムリの法則って何ですか?」
アンドレイ・パブロビッチは静かに立ち上がって、ヴィクトルの方をうかがったが、彼は居眠りをしていた。
「もういいぞ、ドニエプル川に放り込め」と付添人に言った。
彼らはしばらく外で待ってゾーラの叫びを聞いていたが、もう一度戻って来た。
「ゴッドファーザーです」と、ゾーラは告白した。
「ボクサーを支援している?」
ゾーラはうなずいた。
「わかった。手間を取らせて悪かったな」
「カタツムリの法則とは何ですか?」ゾーラは呟いた。
「第五条、住人を追い出すために他人の家に入る罪には溺死をもって罰す」
鉄のドアが閉まった。
「サウスブリッジから彼を投げ込み、彼が岸まで泳ぎ着ければそれはそれで運がいいってことだな」とアンドレイ・パブロビッチは付添人に指示した。
帰り道でパーシャが「双子はどうしましょう」と言うと、「彼らが二度とキエフに顔を出さないように言ってやって、ジトミールかモスクワに留めておけ」とアンドレイ・パブロビッチは言った。