“The Cat's Table” by Michael Ondaatje

“The Cat's Table” by Michael Ondaatje

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(1)
彼は言葉を発しなかった。
ずっと、車の外を見ていた。
前の席の二人の大人たちは、小声で話していた。
こんな夜中にはコロンボでは車はほとんど通っていない。
港のはしけに留まっている船のそばに車が止まり、少年は外に出る。
少年は今夜11歳になったばかりだ。
船はに乗るのは初めてだが、海岸に出現した街のようで、どんな町よりも明るく輝いていた。
乗務員が食べ物と飲み物を配り始めた。
サンドイッチを食べて、自分の船室に降りて行って、服を脱いで、寝台にもぐりこんだ。
彼の船室は喫水線より下だったので、窓はなかった。
 彼はデッキに出て船まで送って来てくれた親戚に手を振って挨拶をする事もしなかった。
それは、セイロンから母のいる英国へ21日の船旅だった。
船内には7つの等級があり、船長を始め、9人のコック、獣医、など600人の人々がいることは、あらかじめ知らされてはいなかった。
伯父さんが、カレンダーに出発日に丸を付けてくれ、学校にも学期末に、アラビア海を通って、紅海を越えて、スエズ運河を通って地中海に入り、イギリスの小さな桟橋に着き、お母さんと会うと言う風に説明してもらっていた。
紙切れがドアの下に差し入れられていて、食事のテーブルは76番です、と書いてあった。
服を着て、部屋から出た。
テーブルには9人がいて、僕と同じくらいの年の少年が2人いた。
ロマジンとカシアスと言う名前だった。
ロマジンは静かで、カシアスは横柄そうに見えた。
僕はカシアスを前から知っていたのに、僕たちはお互いを無視した。
僕たちは同じ学校に通っていて、彼は僕の一年上級生だった。
カシアスはワルで、退学処分になっていた。
ラスクエッテさんは、「私たちの席は、船長から一番遠い、一番悪い席「猫の席」のようですね。」と言った。
しかし、運がいい事に、この席には何人かの面白い大人が混じっていた。
植物学者、ケンジ―に店を持っている仕立屋など。
落ち目のピアニストもいた。
 マザッパさんだ。
午後はピアノのレッスンをして、夕方、船のオーケストラと演奏していた。
それで安く船に乗れたのだ。
最初の食事の後で、彼はロマジンと、カシアスと僕に彼の人生の事を話してくれた。
かれの詩のおかげで僕たち3人は仲良しになった。

また、たまたま、僕の遠いいとこのエミリー・デ・サラムが乗っている事もわかった。
彼女が同じテーブルではなかったのは残念だけど。
というのは、僕は一人っ子で、親戚は大人ばかりだったから。
だから、長い間、隣に住んでいた僕よりも年長のエミリーは大人の世界への手がかりだったのだ。
僕はよく彼女に意見を聞き参考にした。
僕たちは、両親がいなくなったり信用できなかったりと言う意味で境遇が似ていた。
僕の両親が離婚する事になった時も、説明も受けなかったが、隠されもしなかった。
両親の離婚がどれほど僕の人生に影響したのかは分からない。
エミリーの家庭はもっとひどく、父親の仕事が不安定で、父親は機嫌次第で子供に罰を与えるような人だった。
彼女は、お婆さんの援助で南インドの寄宿学校に行き、セイロン電話会社に就職した。
彼女は今17歳だった。
僕がプロムナードデッキを走り抜けようとしたとき、彼女が僕の肩を捕まえて立ち話をするのを見て、 ロマジンとカシアスは僕の事を見直したようだった。
しかし彼女は僕たちと一緒に行動しようとはしなかった。
彼女には自分なりのこの航海に関する計画があって、それは英国での最後の学校生活の前の最後の自由な数週間を過ごすと言う計画だった。
 ラリー・ダニエルズは僕たちと一緒に「猫のテーブル」で食べている植物学者だ。
小柄な細マッチョな男だ。
いつもネクタイをして、袖をめくり上げていた。
カンディーの中産階級に生まれて、若い時はスマトラとボルネオで森林と植物の植生の研究をしていた。
最初に僕たちが知っていた彼についての事と言えば、彼が、彼の事を鼻もひっかけてくれないエミリーに首ったけだと言う事だけだった。
その事をどうにかしようと、彼は僕に近づいてきたのだ。
彼は、僕がエミリーと彼女の友達とプールのところで笑って話しているのを見たからだと思う。
ダニエルは夕食の時は僕の隣の席だったので、彼は容赦なくエミリーについて聞いてきた。
僕が教えてあげられるは、プレイヤーズ・ネービーカットたばこが好きだと言う事だ。
それ以外の情報は、僕は、よく知らなかったので、捏造する事にした。
「エレファントハウスのアイスクリームが好きだよ。」
「映画に行くのが好きだよ、女優になりたがっている。」
ダニエルは僕の嘘の情報にすがりついた。
「 この船にも映画会社がある、多分僕は彼女を紹介してあげられるよ」
次の日、彼が時々船上で公演しているジャンクラ・トループに、彼女の事を話して、リハーサルを見学させてくれるように頼んでいた。
ジャンクラ・トループは時々は午後のお茶の後でお皿やカップを使ってじゃアグリングをする事もあるが、普通は極端な化粧をして衣装を着て、公式にパフォーマンスをしていた。
彼らは船客を急ごしらえの舞台にあげて、びっくりするような彼らの個人的な事を発表するのだった。
普通、それは失くした財布や指輪のありかについてだったり、お客が自分の妹に会う為にヨーロッパに行くところだと言う事実だったりした。
このパフォーマンスは顔に紫色の縞模様を書いて目を白くふちどりした、ハイデラバード・マインドの役だった。
 午後の遅い時間、僕がCデッキを歩いていて、ハイデラバード・マインドが救命ボートの下にかがみこんでパフォーマンス前の化粧をしているのを見た。
彼は手鏡で顔を映しながら顔に紫色を塗っていた。
彼は痩せていて、色を塗った顔が小さな体つきのわりに大きすぎて見えた。
彼は僕が見ていることには気が付かなかった。
彼が立ち上がって日向に出てきた時、黄ばんだ悪霊のような目でぼくをちらっと見て、僕を見なかったかの如くに無視して歩き去った。
僕は初めて薄いカーテンの後ろで何が起きているのかを目撃したのだった。
衣装で飾った彼をステージで見てもあまり怖くは無くなった。
彼の衣装の中の本当の姿を知ってしまったのだから。
ロマジンとカシアスと僕との友情は、それぞれに自分の中に秘密を抱えながらも、急速に深まっていった。
個人の秘密を秘密にして打ち明けないという技術は寮生活で会得していたのだ。
僕たちの乗ったオロンセイ号は僕たちを規則から自由にしてくれた。
動物のお面をかぶった大人の乗客たちも夕方のお祝いの間、濃い紫いろの制服を着てステージ上で演奏するマザッパさんの所属するオーケストラに合わせて、ダンスをしたりしていた。
 あの頃、僕は何者だったのだろうか?
もし、写真があるとすれば、短い綿のシャツを着て、ボラレスガムアの僕の家と庭の間のカビの生えた壁に沿って裸足で走っている写真か、ごみごみした通りを眺めている写真だ。
 船の中では一人でいる事は難しい事が分かった。
一日のほとんどを、ロマジンやカシアスや時にはマザッパさんや他のキャットテーブルの人々と過ごした。
一人になるため、午後の暑い船室にひきこもり、寝台に横になって低い天井を見て過去を振り返っていた。


長そうなので、とりあえずここまで。


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