“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (49)
“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (49)
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37
暗くなって、彼らは旅を続けた。
車内に明かりはついてなく、ヴィクトルの目は対向車のヘッドライトを数えるのに飽きてきた。
昼間の間眠っていたので、今は目が覚めている状態だし、それにだんだんお腹がすいてきた。
レズバンのチェチェンの仲間が睡眠薬入りのお茶を持って回ってきたが、ヴィクトルは断った。
後で、断らねば良かったと思った、人工的に誘発された睡眠の方が異常な覚醒よりは望ましいから。
マトヴェイ・ヴァシリエヴィチは窓に頭を付けて眠っていた、
彼らのうちで最も運がいい男は、アラスカ製の上着を着た背の高いこざっぱりした男で、後ろのベンチシート席で大いびきをかいていたが、そのほかの人々は半分横になった姿勢で居眠りしていた。
結局、エンジンの音、乗客のいびき、チェチェン語でのやりとり、運転手への遠慮がちな言葉、理想的とは言い難いものの、ヴィクトルはもう一度眠りへと戻っていった。
境界線に近づくと、ミニバスは警告灯を点滅させた。
10分後、ヴォルガ(Volga GAZ?)がやって来て、戦闘服を着た2人の男が大きな袋を持ってミニバスに乗り込んできて、ヴォルガが帰って行き、カラシニコフ銃を持った男が引き返してきた。
車内にライトがともり、チェチェン人が寝ている乗客を揺り起こし、袋から温かい迷彩服の上下を取り出して、ヴィクトルの膝の上に投げてよこし、それに着替えるように言った。
運転手は目的地の表示板をヴィクトルの上着と同じ赤色の文字でMoESと書いてあるものに変えた。
今や彼らは、国家緊急サービス職員に偽装しているにもかかわらず相変わらず乾燥した彫りの深い顔をしたマトヴェイ以外は、同じ様に見えた。
変装が終わって、ミニバスは発進し、後ろのベンチ席には2人の新人が座っていた。
前方には村の灯かり。
道路は全くの無人だった。