“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (105)
“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (105)
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79
窓には雪がたたきつけているのに、アパートは驚くほど暖かく、居心地が良く、静かで、とても眠っている気分ではなかった。
ニーナは彼に最大限のスペースを確保し、彼が触れないように、ベッドの端っこで安らかに眠っていた。
彼は立ち上がってしばらく彼女を見ていたが、昨日のお祭りの時、マクドナルドから家に歩いて帰るとき、ソニヤが使った「孤児」と言う言葉をずっと考えていた、
「一人の女の子が言ってたけど、あの子たちはみんな孤児だってこと本当なの?」と彼女は聞いた。
「そうだよ」
「私と彼みたいに?」
その時、運転手は、彼がミーシャの事だと知らなかったので、驚いて振り向いた。
ヴィクトルは、ソニヤにはヴィクトルとニーナ叔母さんとミーシャがいるから孤児じゃないよ、と説明した。
「リョーシャ叔父さんは?」
ヴィクトルは肩をすくめた。
彼はガリーナ・ミハイロフナの長いお別れの握手について思い出していた。
「どうか私たちの所を訪れに来てください」と彼女は頼んだ。
「近くに小川があります。春には素晴らしいです。ビーバーとヌートリアがいます。一晩お泊めする事も出来ますよ。」
彼は、行けないと分かっていたが、「ぜひ」と約束した。
カーチェイエフが彼の立場だったら、絶対に守るつもりの無い約束はしなかっただろうなあと思いながら暗闇に立っていた。
あの約束は、ガリーナ・ミハイロフナがカリノブカへ帰る道すがらを幸せにしておくためだけの簡単な約束だったのだ。
ヴィクトルは部屋着を着て、居間を忍び足で通り過ぎて、台所に入りドアを閉めた。
電気をつけて、突然の眩しさに目を覆ってしまった。
タイプライターを取り出そうと思ったが、音が出る事を思い出して止めた。
その代わり、紙を取り出して、いつもの場所に座り、真っ白な紙を眺めていると、動かなくなってしまった。
台所のドアがギーッと開いたのでびっくりして飛び上がった。
ミーシャが彼をじっと見て立っていた。
「何か食べ物が欲しいの?」
高次の存在が彼の行動や思考を観察しているかのように、ペンギンは立ったままじっと見つめていた。
ヴィクトルは紙に「ミーシャ」と書き、ミーシャを見て「送り返す」と書き加えた。
そのちょっと後に、彼の手は、自分の意思で、疑問符を書き加えた。