The Best American Short Stories 2022 (55)

The Best American Short Stories 2022 (55)
“Man of the House" by Kim Coleman Foote (14)   Ecotoneより
しかし彼はあの「カントリ-ロード」をハミングで歌い始めた。
ヴェーナの話しの中には錆びた色の埃については何も言及していなかったが、それは彼に彼の前を走っている車のバンパー(のナンバープレートの州名)を見る以上に感銘を与えた。
広大な青い空だ。
なだらかな緑色の丘とどこまでも続く松の木。
毛むくじゃらの樫の木から垂れ下がるスペイン苔。
道の横の看板には、ゆでピーナッツと豚足の広告。
ニュージャージーとは大違いだ。
ヴェーナは綿花畑についても言わなかった。
彼らの家族は奴隷時代とそれ以後その仕事についていたに違いないが、白い綿毛が頑固に散らばっているその耕された畝は、ジェブの心を奪った。
それは初めて経験する一月の暑さと湿度に酔ったという事でもあった。
それは彼のポリエステルのシャツを通して沁みこんできて、南キャロライナあたりで車の窓を下ろさせた。
その天気だけでも彼の叔父さんを帰る気にさせたのかもしれない。

 ヴェーナは彼女の話しで荒唐無稽な言葉で人をじっと聞いているようにさせることはできなかったが、ジェブはもし彼女がこれらの親密な詳細さに触れていたら、彼女たちがやって来た場所をもっと深く知ることができただろうに、と思った。
その代わり、彼女は彼が生まれたと言うアラバマの町のような名前にこだわった。
それは彼女はそれを「遠慮がない」カンディッドのように発音したがスペインの首都(マドリード)と同じ名前だと言った。
それは道路地図上には載っていなかった ― 驚く事じゃない。

 フロリダのキャンベルトン ― 道路標識によれば、人口316 ― に入った時には彼は口元をほころばせた。
道の横の一つだけのヤシの木を見ながら彼はヴェーナの夕食で示した子供っぽい歓声を感じていた。
彼は今までに個人的にはヤシの木を見た事はなかった。
一見偶然見たと言う感じだったがそれは彼が到着したという直接的な声明だった。

 木の横には小さなレンガ造りの平屋建ての建物があった。
手描きの標識はそれが郵便局で市役所だと言っていた。
ジェブがほとんど空っぽの駐車スペースに車を止めた時、オーバーオールを着た白人の老人がトラックを覗き込みに歩いて近づいてきた。

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