「シュレディンガーの赤ん坊」チャーリー・フィッシュ(5)
「シュレディンガーの赤ん坊」チャーリー・フィッシュ(5)
https://www.eastoftheweb.com/short-stories/UBooks/SchrBaby922.shtm
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「かしこまりました、」と、その男が言った。
「錠の交換に250ポンド、出張代金に50ポンドいただきます。」
「上々だよ、」と、私は私の住所を告げた。
「10分で伺えます。身分証明書はお持ちですか?」
「いや、アパートの私の財布の中だ。」
「運転免許証は? 公共料金の請求書とか?」
「私はパジャマを着ているんだ。」
モーは身を乗り出して、手で口を押さえている。
「大変すばらしいパジャマですよ!」
私は彼を肘で追い払った。
「残念ですがあなたが住所を示す有効な身分証明を提出できない事には錠を交換することはできません。」
私は自分のイラつきを見せないように努力した。
成功しなかった。
「あなたが私をアパートに入れてくれればすぐにIDを提出できるよ。」
「まことに申し訳ございません、お客さま、」という不機嫌な返事が返ってきた。
彼は電話を切った。
私は原始人の様な咆哮をあげた。
モーは、私が彼の電話を、酒の陳列してある通路に投げ捨てないか心配しているようだった。
私は怒りを呑みこみ、二番目の鍵屋の番号を押した。
「もしもし、セキュアロック有限会社です。」
「もしもし、アパートから締め出されたんだ。」
「そうですか。それは私が解決させていただきますので、問題ありません。」
「緊急事態なんだ。それに、私は身分証明を何も持っていないんだ。」
「住所は何処ですか?」
私は彼に住所を告げた。
「今、他の電話に出ています、お客様、だから私は、・・・そうですね・・・45分後に伺えます。」
私は自分の時計を調べた。
私の顔は怒っているようだったに違いない。
― 実際、モーは私を気の毒そうに見ていた。
「もっと早く来られませんか?」
「45分です。」
私は緊張してため息をつき、電話を切り、涙を浮かべながら受話器を手渡した。
「ありがとう、モー。」