“The Cat's Table” by Michael Ondaatje (5)
“The Cat's Table” by Michael Ondaatje (5)
(5)
犬は突然の動きを恐れたので、ラマディンがベッドで抱いて寝た。
次の朝3人が起きた時、船は紅海に入っていて、大変な事が起きた最初の日だった。
一等船室との間はいつも2人の客室係に守られていたのでそこを通って一等船室に入る事はいつもは難しかった。
しかし、ラマディンの犬は通り抜けてしまった。
犬はカシアスの腕から飛び出して、船室から走り出した。
僕たちは犬を探して廊下を走り回った。
しかし、それはすぐにBデッキに現れて手すりに沿って走って、ボールルームに入り込んで、金色の階段を上がり、2人の客室係のところを通り抜けた。
彼らは犬を捕まえようとしたが出来なかった。
犬は僕たちが食堂からこっそりポケットに入れて盗み出して与えた、食べ物を何も食べていなかったので、多分食べ物を探していたんだろう。
誰も犬を追い詰めることはできなかった。
乗客も彼をちらっと見ただけだった。
彼は人間には興味無さそうだった。
上品な女の人がしゃがんで甲高い声で「おいで、ワンちゃん」と言ったが、犬は振り向きもせず図書室の桜材の穴倉に入り、どこへともなく消えてしまった。
彼は単に空腹な犬で、昼間からこの狭い船に閉じ込められて怖がって通路を走っているうちに行き止まりに入ってしまった閉所恐怖症の犬なのだ。
そのうち、犬はマホガニーの壁の絨毯の張られた廊下に沿って、ドアが半分開いたマスター・スイートルームに滑り込んだ。
そこには、かたづけ忘れたトレーがあった。
犬はヘクター・デ・シルバ卿がうつぶせに寝ている、大きなベッドに駆け上がった。
そして、彼ののどにかみついた。
オロンセイ号は一晩中紅海上に有った。
夜明けにジザン沖の小さな島を通過し、遠くにオアシスの町アブハがぼんやりとみえた。
そして町は視界から消えて行った。
ヘクター卿の死亡のニュースが船を駆け巡ったのは、夜が明けてすぐの時間だった。
彼の遺体は水葬に付されると言う噂がそれに続いた。
しかし、葬儀は沿岸の水域では行われないので、遺体は地中海に入るまで待たされなければならないということだった。
続いて、彼の死因について僕たちが聞いている聖職者の呪いよりももっとびっくりするニュースがもたらされた。