“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (22)
“Penguin Lost” by Andrey Kurkov (22)
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投票日6日前
今度はニーナが電話に出た。
「二人は元気か?」
「帰って来て、ソニヤが寂しがっているわ。」ヴィクトルは彼女の温かい答えに驚いた。
「ソニヤはそこにいるの?」
「いいえ、隣の子と一緒に、外にいるわ」
「一日か二日ここにいるつもりだ」
珈琲を飲みながら、彼女の愛想の良さについて考えた。
彼女は、自分が追い出されるんじゃないかと思ったのかもしれない。
アンドレイ・パブロビッチはポーシャと早くから出かけた。
家政婦が来て床掃除に取り掛かった。
その後、パーシャが電話しておいたコンピュータの専門家が来てイメージ戦略スタッフのコンピュータを調べ始めた。
ヴィクトルは子供部屋まで案内して、キッチンに戻ってきた。
彼は自分がアンドレイ・パブロビッチのカタツムリの法則について考えている事に気が付いた。
さしあたり、彼は快適な家にいた。
外は、後6日は騒がしいが、ここは静かだ。
選挙が終われば、幸運なカタツムリは代議士と言う公の地位に見会った新しい殻を与えられ、不運な方は何もなかったかのように密かに道を分かってゆく。
ヴィクトルはタイヤの跡の付いた庭と、フェンスに沿って植えられた手入れの行き届いたライラックを見た。
空は雲も無く青かった。
小さなツバメが急降下して急上昇していった、雨が降る兆しだ。
彼の注意はさっき彼の前を通って庭へ出て言ったコンピュータの専門家の方に向かった。
かれは煙草に火をつけて心配げにヴィクトルを見ていた。
携帯を取り出して、話し、聞いて、頷いて、煙草を踏み消して、部屋に帰ってきた。
すぐその後、コンピュータの専門家は、今度はジャケットを着てブリーフケースを抱えて、彼の前を通り、急いで出て行った。
ヴィクトルが、子供部屋でコンピュータがまだついていて、たまたまそこにあったファイルを開くと、前回の議員の、集団農場の民営化に絡む、公園の私有化に関わるスキャンダルが表示された。
それ以外にも、使用した車両のメーカーと数、自宅の住所、2人のドライバーの名前と自宅の住所、日常生活が表示された。
かつて、編集長のオフィスの金庫を見たときの様な、親戚や身内の事を暴くような嫌な気分がしてクリックするのを止めた。
あの時は、編集長は、ウクライナから逃亡しようとして、ヴィクトルに事務所に航空券を取りに行かせたのだった。
そのとき、自分で書いた新聞記事の原稿を見て、驚きと恐怖を感じたが、今あれらの記事が将来出版されると確信した。