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qutakuta
空気を詠む
空気を詠むのが好きだ。
ちょっと前まではプール上がりの水着のように
身体にまとわりつく暑さだったのに
気づけば、その凶暴さは和らいで秋の入り口を感じるようになった。
帰り道。
路地の外灯、パーキングの看板、信号機の明かり、角にあるコンビニの光、マンションの部屋から漏れる電気、車のテールライト。
それらが一番似合うのは、夏から秋に変わろうとしている、この季節だと思っている。
暗闇になりきれてない夜の色に、やさしく、あたたかく灯る街を見ては、
小学生の頃、思いっきり遊んで家路につくときのように
「家に帰ろう」と思えるから不思議だ。
かの清少納言も「夏は夜」なんて詠んでいたくらいだから
今も昔も一緒だな、なんて思えてくる。
(清少納言は、真っ暗な夜の月の光や蛍の灯を詠んでいるのだけれども)
現代の夏を、彼女も「いとをかし」と感じてくれるだろうか。
*
今年はなかなか外の空気を感じられないけれども
またいつか、思いっきり空気を吸い込んで
季節の訪れを感じる日常が戻ってくることを願っている。