風のようなコーヒー「ミャンマー ユワンガン」
コーヒーを風に例えることは、きっともうないと思う。
念願のミャンマーコーヒーを手に入れた。それもユワンガン。
コーヒーはシングルオリジンばっかりで、家でいれる時はエチオピアの豆がここ数年の定番。でも最近はアジアの豆にもハマっている。
台湾、中国(雲南)、インド、インドネシア、タイ、ベトナム、ラオスあたりは飲んだ。国によって個性的な風味。かなりクセがあるから毎日飲むわけではないけど、たまに恋しくなる。
ただしミャンマーだけは飲んだことがなかった。私の知る限りでは日本の店で見たことがない。
あまりにも気になって、昨年2月にミャンマーにひとりで行こうとしていた。ユワンガンのコーヒー農園に行きたくて。
地球の歩き方を買って、当時の上司に休暇をもらうためのロビー活動をして、あとは航空券を買うだけだった。
そんなときコロナが世界中で流行りはじめた。ユワンガンは武漢から直行便が出ていたこともあって、あと一歩のところでやむなく見送った。それから世界が変わり、ミャンマーの社会情勢も悪化した。
おそらくもうしばらくはミャンマーに行けないだろう。あのとき無理矢理行ったほうがよかったのか、辞めておいて正解だったのかはわからない。
いつもなら「ありがとう」「ごめんなさい」しか覚えていかないのに、珍しく名前の書き方まで調べていた。
そんな、一方的に複雑な想いを抱えていたミャンマー。行けないならなおさら気になる。ずっと飲んでみたいと思っていた。
SNSでミャンマー情報をフォローしていたら、このまえミャンマーの豆販売の投稿を見つけた。迷うことなく買った。
どんな味なんだろう。位置的に、けっこうどっしりした風味なんだろうか。ちょっとドキドキしながら豆を挽き、ハンドドリップでいれてみる。ひと口含んでみて驚いた。
アジアの豆って全体的に力強さというか、ちょっとクセがある。たまに飲みづらく感じたりもするんだけど、これは飲みやすい。
ハーブのような爽やかな風味。洗練されていて、品がある。舌の上をすっと抜けていく感じがたまらない。それはまるでコーヒーを飲んだことを感じさせないような、風のような余韻がすごく心地いい。こんな豆、はじめてだぞ?
エチオピアが花なら、インドネシアは土。そしてミャンマーは風のようなイメージ。これ、冗談抜きにすごく美味しい。
ミャンマーにはこんな風が吹いているんだろうかと、産地に想いを馳せながら飲んでいたらあっという間に一杯飲み終えてしまった。
コーヒーの風味とは裏腹に、現実では国を超えて届くような、嵐のような悲しいニュースが日々続いている。
風のように過ぎてほしい。たった一杯のコーヒーに、そんな願いのようなものを感じたのはわたしだけだろうか。
ミャンマーの風に想いを馳せる。いつか現地で、この答え合わせをしたい。
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