ピーナッツが、とまらない。「ほていや 中塚商店」(田原町)
ここ数週間で配りまくっている手土産がある。
それが「ほていや 中塚商店」の豆菓子。わたしはここのピーナッツが最強おつまみだと思っている。
数年前にこの店の豆に目覚めてから、勝手にこの豆屋の非公認エバンジェリストをやっているくらいには好きだ。なんてったって、想像を絶する美味しさの豆がここにはある。
こう言ったら失礼だけど、見た目は普通のピーナッツなので非常に映えない。だけどわたしはこのビジュアルを含めて推している。
お世話になった人に「賄賂です」と渡すと、かなりの確率で一瞬キョトンとされるここのお豆。30代の女性から渡される手土産がチョコでもクッキーでも煎餅でもなく、ただの豆なんだから無理はない気もする。
写真のピーナッツは「バターピー」。うまいがお約束されたネーミングだ。それに嫉妬したくなるくらいつるんとした表面。ホイッと一粒口に放り込むと、カリッといい音がする。
カリッを合図に、つるんとしたビジュアルに隠されていたいろんなものが目を覚ましたように口の中を駆け抜ける。
どこからともなく絶妙な塩気がやってきて、噛むほどにピーナッツの甘さが広がる。「甘いよね? これ甘いよね?」と口の中で確かめながら噛むうちに一粒食べ終えてしまう。そして最後にピーナッツ特有のあの苦味が残る。口の中が忙しい。
このプレーンな見た目からは想像できないくらいに何重奏ものハーモニーが奏でられる。この数行を書くために5粒食べてしまった。まったく罪深いヤツだ。大好きだ。
これをつまみにビール何杯でもいける。ピーナッツがとまらない。だから買うときは100gずつしか買わないようにしている。
バターピーのほかにも落花生、味好みなど人によって渡す豆を変えてはいるが、わたしからこの「豆賄賂」を受け取った人からの反応はすこぶるよい。
「お豆屋さんにいく」と言えばお使いを頼まれ、場所を調べて休日にクルマを飛ばして買いに行った人、「マーメー!!!!うっめぇええぇぇええ!!!」と絶叫LINEを送りつけてきた人もいれば、「俺のダイエットを邪魔した。とまらない」とクレームをいただいたこともある。
わたしが100通り「美味しい」というよりも、受け取った人の反応を見ればこの魅力は充分伝わると思う。それくらい虜になる豆菓子たち。
ここまで散々書いてきたが、冒頭のバターピーは実は2番手に美味しいと思うお豆。
いちばんは寒い時期にしか登場しない「味付」という薄皮つきの落花生。これがずば抜けて美味しい。薄皮つきの塩気が効いた落花生なんだけど、絶妙な塩気と、薄皮のえぐみのバランスがたまらない。寒い日に暖房をきかせながら緑茶とみかん、ビールと味付でしあわせな1日が過ごせてしまう代物。
買う日によって塩気が違うから、日によって微調整しているのだろう。そういう細やかな配慮もまた、大好きな理由のひとつ。
ときどき店の奥から豆を煎っているような音が聞こえる。ASMRがあればずっと聞いていられる。あまりにも美味しくてしょっちゅう買いに行っていたら店の人に顔を覚えられてしまった。
わたしもまだ全種類コンプリートできていない。同じのを何度も買っちゃうくらい、リピートしたくなるおやつ。最近は自分用にいくつか買って鞄に入れているけど、気がついたらみんな配ってなくなっている。
「また配っちゃった…」って思うけど、配りたくなるおやつがあることも、お礼をする人がたくさんいることも、しあわせなことなのかもしれない。そういうことにしておこう。
ほていや 中塚商店
なんとInstagramがあったとは。
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