鴨撃ちとキャベツ(しゃがむ滑り方)
なんだかとっても美味しそうなタイトルになってしまったが、食べ物の話ではないので悪しからず。
先日、ダンスの簡単な振り付けを習っていたのだが、その中にキャベッジ(キャベツ)があった。これ、日本ではなんという名前なのか分からないのだが、片足でキャベツのように丸まってしゃがむ滑り方だ。日本語だけではなく英語でキャベッジをググってもローラースケートはもちろんアイススケートでも出てこないので、もしかしてうちのクラブだけの呼び方なのだろうか。
日本人は代々子供の頃から床に座る生活に慣れていて、う〇ち座りが苦も無く出来る人が多い。英語圏の人たちは歴史的にも椅子に座る文化が長いせいか、姿勢を低くしてしゃがむという動作が苦手な人がかなり多い。しゃがめる人でも、足の裏の筋が伸びなくて踵が床から浮いてしまう人ばかりだ。
ちょっと話はそれるが、こちらで日本人の方の家に遊びに行くとソファーの前の床に座ってちゃぶ台のようにコーヒーテーブルを使う光景をよく見るのだが、こちらの人と一緒に行くと「なんでソファーがあるのに床に座るの?!」と不思議がられる。英語圏では家の中で床に座る習慣があまりないし(だから靴のまま家の中を歩き回って平気なんだろうな)、ピクニックでは椅子がないからブランケットに座るだけで、折り畳み椅子をピクニックに持参する人も多い。
私も子どもたちも日本人の遺伝子を受け継いでいるおかげで、しゃがんで庭の草むしりをするのも平気なのだが、おかげでローラースケートでもかなり得をしている。というのも、スケートにはしゃがむ滑り方が結構あるのだ。しゃがめない人は、当然こういった滑り方を習得する前に、まずしゃがむ訓練から始めなければならない。
靴紐がきつくてしゃがめない場合は、しゃがめる程度のきつさで紐を結び直すこと。靴紐は基本的に、足首回りはきつく、上にいくほどゆるめに結ぶ。詳細はこちらの後半部分を参照。
初めは「シュート・ザ・ダック(鴨撃ち)」や「キャベッジ(キャベツ)」を習う。これを初心者用の動きだから必要ないと思っていると、スピンを発展させていく段階で苦労するかもしれない。特にしゃがむのが苦手な人は、早いうちにしゃがむ練習を始めて、時間をかけて筋を伸ばしておいた方が良い。
そして片足スピンがうまく回れるようになってきたら、この動きをシット・スピンに応用していく。
■しゃがんで両足で滑る
まずはしゃがんで両足で滑ってみよう。
1)しゃがんでまっすぐ両足で滑る。
2)慣れてきたら両足でエッジにのってみよう。右にカーブ、左にカーブなど、行きたい方向に自由自在に滑ってみる。
3)両足で滑りながら立ち上がる。
床にぴったりと踵をつけてしゃがむのが苦手な人は、毎日しゃがんでふくらはぎと足首の裏の筋を伸ばす練習をしておく。
■シュート・ザ・ダック
日本でもトイレに行くことを「キジ撃ち」と表現するのと同じように、しゃがむ姿勢と銃身のように伸ばす足からシュート・ザ・ダック(鴨撃ち)と呼ばれている滑り方。
1)両足で滑りながらしゃがむ。
2)片足をまっすぐ上げる。地面と平行に。
3)手はつま先やトウストップ、ふくらはぎなど、足のどの部分を持っても良い。足に触らずまっすぐ前に出しても良いし、横に広げても良い。
4)慣れてきたら、エッジにのってアウトサイド、インサイドとカーブしてみる。
5)両足で滑りながら立ち上がる。
ちなみに、私は足を持つより両手を前に出すだけでカウンターバランスを取るか、足を持っているフリをして添えているだけの方が上半身のバランスが崩れず滑りやすい。
右足も左足も両方練習しておく。シットスピンに応用する段階になると、前回り、後ろ回りでそれぞれ違う足を使う必要が出てくる。
シュート・ザ・ダックについてはここでは紹介しきれないほど多くの動画がアップされているが、良さそうなものをいくつか選んでみた。
↑ Shoot The Duck Roller Skating Tutorial In 4 Easy Steps by Skatie
まずはケイティの動画から。これが一番分かりやすいと思う。イギリスではシュート・ザ・ダックは「ティーポット」とも呼ばれているそうだ。イギリスらしい。芝生の上でしゃがむ練習をしよう、というのは良いアイデア。先につま先を触ってからゆっくりしゃがむとやりやすいというのも、なるほど。こうすると重心が後ろにいきすぎて尻もちをついてしまうのを防げるかもしれない。しゃがめない人というのは、後ろに尻もちをつきがちだ。しゃがむことの大変さなんて分からない、というラッキーな人は、つま先を触って……など考えずにただしゃがめばOK。
↑ HOW TO SHOOT THE DUCK at Red Rock Canyon in Las Vegas - Planet Roller Skate Ep. 29 by INDY JAMMA JONES
人気ユーチューバーのインディの動画。アメリカらしい広大な景色が見ごたえあり。
↑ How to 'shoot the duck' on roller skates! by Kev & Jaz
ケブとジャズという夫婦による動画。
↑ How to "Shoot the Duck" on Roller Skates - Tutorial 15 by That Nicole Fiore
ニコール・フィオーレによる動画。
■キャベッジ
キャベッジという呼び名はググってもアイススケートでさえ出てこないので、うちのクラブでの呼び名か、私のいる国だけでの呼び方なのかもしれない。丁度いい動画も見つからなかったのだが、「シット・タック・スピン」というスピンの動きが一番近い。片足を後ろに畳んでしゃがむ滑り方だ。
↑ Sit Tuck Figure Skating Spin by ArtisticFigureSkater
このスピンの後半で片足を後ろに持ってくる動きがあるが、この態勢をうちのコーチたちはキャベッジと呼んでいる。キャベツのように折り重なり丸まって滑るからだ。
Photo: Clément Bucco-Lechat
これは、2016年のリレハンメル五輪でのデニス・ヴァシリエフス選手。
今の段階では、スピンではなく、まっすぐに滑りながらこの態勢になってみる。うちのクラブでは、初心者の振り付けにこのまっすぐ滑るキャベッジをボディムーブメントの1つとして入れることが多い。これをやりながら上半身や腕を美しく動かすと(前で両手を交差するとか)いっぱしのエレメントになる。
1)フォアで滑る。
2)片足(どちらでもOK)をもう一方の足のふくらはぎの後ろにあてて、一本足で滑る。
3)そのまましゃがんで滑る。
4)滑りながら立ち上がる。
私のような女性の大人スケーターにとって一番大変なのは、最後の立ち上がる部分だと思う。子どもたちや筋力のある男性は身軽にひょいっと片足でそのまま立ち上がってしまうが、お尻の重い私は片足でしゃがむことはできても、そこから片足で立ち上がることはできない。その場合はしゃがんだまま両足になってから立ち上がればOK。
ちなみに、先日習ったキャベッジの入った簡単なダンスの振り付けはこんな感じだった。
ピボットターンとスタートの振り付け(円の外側の手を高めで両手を開き回転、ターン終了とともに屈んで上半身を地面と平行にしながら、両手を頭の上に持って来て翼をたたむような振り付け) → 滑り始める → モホーク&トランジション → バニーホップ → キャベッジ(屈みながら両手を前に持ってきて翼をたたむような振り付け) → クロスフロント(フォアのクロスオーバーとは別) → スプレッド・イーグル → モホーク → 両足スピン → バックのクロスオーバー → センターで向きを変えて8の字を描くように反対の足のバッククロス → 終了
実はバニーホップは滑り始めに勢いをつける最初のエレメントだったのだが、私はスピードを出したモホークが怖いので、モホーク後に替えさせてもらった。
音にあわせて滑ると、一気に楽しくなってくるから不思議だ。
ツイッターでもつぶやいています。