【今日の論理】整数解が存在する条件 240222
a を 1 ではない正の実数、n を正の整数とします。次の不等式を考えます。
$${\log_a(x-n)\gt \dfrac{1}{2}\log_a(2n-x)}$$ …①
(1) n = 6 のとき、この不等式を満たす整数 x をすべて求めてください。
(2) この不等式を満たす整数 x が存在するための n についての必要条件を求めてください。(2019 東北大)
(1) で x = 7, 9, 10, 11 を答えとしたものが見受けられました。例えば、7 は a の値によって、不等式の解になったり、ならなかったりしますので、その旨を添えておかなくてはなりません。
(1) も比較的ちゃんと説明してみます。
①は次の不等式と同値で、改めてこれを①とします。
$${2\log_a(x-n)\gt \log_a(2n-x)}$$ … ①
x は $${n\lt x\lt 2n}$$ の範囲でないと、対数がとれません。よくいう真数条件です。いま、x は整数ですから n+1 以上 2n-1 以下です。
真数条件のもとで、
①は $${\log_a(x-n)^2\gt \log_a(2n-x)}$$ … ② と同値です。
(1) では、多くても x = 7, 8, 9, 10, 11 … ③の5個です。
真数条件は早いうちに考えておいていいと思います。なぜなら、それが対数の問題の前提で、それ以外は考えなくてもいいものだからです。考える対象を明確にしておくことは大切なことです。
$${a\gt 1}$$ のとき、
② は $${(x-n)^2\gt 2n-x}$$ です。
n = 6 なので、$${x^2-11x+24\gt 0}$$ ③のうちで x = 9, 10, 11
$${0\lt a\lt 1}$$ のとき、
② は $${(x-n)^2\lt 2n-x}$$ です。
n = 6 なので、$${x^2-11x+24\lt 0}$$ ③のうちで x = 7
以上より (1) の答えは
$${a\gt 1}$$ のとき、x = 9, 10, 11
$${0\lt a\lt 1}$$ のとき、x = 7
(2) に進みます。
$${a\gt 1}$$ のとき、x = 2n-1 は結構な可能性で解になる気がします。実際に調べてみましょう。これで、十分な条件がわかります。
x = 2n-1 とすると、
$${\log_a (x-n)=\log_a(n-1)}$$, $${\log_a (2n-x)=\log_a1}$$
したがって、$${n\gt 2}$$ ならば x = 2n-1 は解になります。
すなわち、$${a\gt 1}$$ のとき、
$${n\gt 2}$$ は 整数解が存在するための十分条件です。
$${0\lt a\lt 1}$$ のとき、x = n+1 は結構な可能性で解になる気がします。実際に調べてみましょう。これで、十分な条件がわかります。
x = n+1 とすると、
$${\log_a (x-n)=\log_a 1}$$, $${\log_a (2n-x)=\log_a(n-1)}$$
したがって、$${n\gt 2}$$ ならば x = n+1 は解になります。
すなわち、
$${n\gt 2}$$ は $${0\lt a\lt 1}$$ のときも、整数解が存在するための十分条件です。
十分条件は結構広いことが分かりました。正の整数はあと2つしかありません。
n = 1 のとき、真数条件から $${1\lt x \lt 2}$$ ですが、そもそもこれを満たす整数 x はありません。
n = 2 のとき、真数条件から $${2\lt x \lt 4}$$ ですが、これを満たす唯一の整数 x = 3 は不等式の解になりません。
実際 n =2 かつ x = 3 のとき
$${\log_a(x-n)=\log_a1=0}$$, $${\log_a(2n-x)=\log_a1=0}$$
n についての条件は $${n\gt 2}$$ より広がらないことがわかりました。
これが、必要十分条件です。