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臑毛・脛毛うるさいな

 貴方は臑毛を汚いと言い出した。
 髪の毛や眉毛は汚くないんだ。まつ毛に至っては、五人に一人ダニが沸いているらしいけれど。嫌われたくないからそんな言葉は飲み込んだ。彼女が言う汚いと言うのは物理的より感覚的な意味を含んでいるのだろう。
 私は自分の脛毛が嫌いじゃないんだ。私の身長がそれなりに大きいくらいであること。私が二重であること。私が扁平足であること。私が天然の癖毛を持っていること。その延長線上に私の脛毛の濃さがある。これら全てが含めて私のオリジナリティで、他の人と違うことを示すもの。だから私は私の脛毛が嫌じゃないんだ。男四人で泊まりに行った時、温泉の洗い場で臑を懸命に剃る私以外の三人を見ていると、自分らしさを自ら消し去っているようで虚しくなったのを覚えている。 
 臑毛が汚いと言うのは時代の流れの一部のようにも思う。昔ではお歯黒という考え方があったように。今では歯が黒いことに美なんて感じられないし、髪の毛が長ければいいなんてことも思わない。趣深い文を書かれても、お堅くて詰まらない人と思われるだろう。少し前の時代なら脛毛も男らしいと評判だったのに、今は臑毛が汚いと言われる。今はその変化する中間点なのだろう。そう思ったら、すね毛を出せる最後の時代なのかもしれない。なおさらすね毛は剃れないではないか。
 だから貴方が臑毛を嫌いだろうが私は気にしない。ただ私の脛を見てあからさまに表情を変えるのはやめてくれないか。私の彼女ならまだしもあなたは私の友達に過ぎない。まるで私の足に蠅がたかっているように見るあなたの顔は、私が半ズボンを履けない大きな理由の一つだと知っているかな。

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