ドーナツとコーヒーカップ

美大に通う 現在19歳 自分をもっと知るために毎日文章書いてます。

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酢豚のパイナップル

 知り合ったばかりで話すこともない時、誰かが嫌いな食べ物は何か、という下らないお題を投下する時がある。お互いの嫌いな食べ物を知っていることは大事なのかもしれない。仲良くなった頃にいざ夕食に誘うとなったらどのお店を予約すればいいか考えなければならないから。しかし、知り合ったばかりでこれから仲が深まるかもわからない人の嫌いな食べ物なんて覚えていられるだろうか。  それはさておき、この嫌いな食べ物が何かという答えとして酢豚のパイナップルという答えが出ることがある。正直、この回答はな

    • 移りゆく季節にファッション流れる

       昨日、一昨日は暖かくなり、ついに春が来たかと喜びの声をあげるが、その声には、目が腫れ始め、鼻を啜る日々を過ごすのかというため息混じっている。  この調子で今日も暖かいのだろうとアウターを脱いで外に出てみたら、そういう日に限って寒い。まだ冬ではないか。この失態を踏まえて明日はアウターを着て電車に乗るのだろう。しかし、その私の頬には水滴がたらりと一粒。そんな未来が見えてくる。  こんな日常を送っていると季節というものが切り替わるではなく、移り変わると表現されるの理由を身に染みて

      • 陰っていくファストファッション

         どうしたものか。ショッピングモールに並ぶようなファストファッションに魅力を感じなくなってしまった。  あの模様もこの模様も、記憶が知っているものばかり。あの形もこの形もみんな私の体が覚えているようなものばかり。ここに並ぶものはその知っているものを組み換えて作られたバリエーションに過ぎない。私たちはこの服が良いと言うが、実のところは、この組み合わせがいいと言っている。自分らしさを出そうとかいシャレにこだわっているとか言いながらファストファッションに触れる人がいるが、そこにはこ

        • 見え隠れする富岡製糸場

           冨岡製糸場。日本の二面を映し出す。  入り口に入ると見えてくるのは工場では珍しい前面に設置された窓。フランスの技術により建てられた煉瓦造り。煉瓦造りの中にも木材が入り混じるこの建物は日本の葛藤の化身にも見える。色褪せながらもその丈夫さに安心感を覚えるレンガ。表面からどんどんと剥がれ、触れてしまったら朽ちてしまいそうでありながらも建築物を支える木材は、不安を煽りながらも、時の流れや記憶、哀愁がそこには詰まっている。  ここで作られた生糸は世界中の貴族、王族に好まれ、日本の誇る

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          空気が美味しい

           冬が春に変わる今日この頃、窓を開けると夜の美味しい空気が私の体を駆け巡った。  そんなことを感じながら、ここで少し引っ掛かるのは「空気が美味しい」というフレーズ。私は食べたわけじゃない。では味覚というわけではない。私は大きく息を吸い込んだ。ではそれは鼻から通ったのだから嗅覚というべきなのだろうか。どうやらそうとも言い切れない気がする。近所のお宅から流れてくるカレーの匂いや近くの工事現場のシンナーの混じったような匂いがあるのならば、それは嗅覚だ。しかし、美味しい空気は少し違う

          ローンレンジャー、これぞ西部劇

           今日は「ローンレンジャー」を見た。映画ひとつ見ただけで、今日は何もしていないわけではない、映画を見たんだ、と自分に言い聞かせている。   なかなか良い映画だった。評価はあまり良くないが、まあ、言いたいこともわかる。この映画はいわゆる西部劇映画。少し語弊を招くかもしれないが、西部劇は話の深さや人の心情にフォーカスするものではない。敵がやってきて正義が叩く。その過程を楽しむもの。だから、そういった人情物が好きな人が最近は多く、そういった作品が多いため評価は低いのだろう。そう言っ

          ローンレンジャー、これぞ西部劇

          ただ電車に乗っていただけ

           午後二時、京王線線上り各駅停車、6号車左から4つ目のドア、一番端の席。私は『堕落論』を開く。顔を下に向け本を読むのは首が痛く疲れる。分倍河原でドアが開くと五、六十歳あたりの男性が私の隣に腰をかける。この時間帯でもこんなに込むものなのだな、と田舎町のような余裕の持った乗車は夢のまた夢だと思い知らされる。男性の着ている上着は元はもっと彩度の高い緑であったのだろうが今はもうしらっちゃけている。無造作に広がった髪を掻きながらタバコの匂いを隣で撒き散らしているのは、正直不快に思ってし

          ただ電車に乗っていただけ

          これだから中華料理屋はいいのだ

           六本木の贅沢な街並みに馴染んでいる中華料理屋。五、六階ほどの高さのビルの一階に入っている。ドアは開きっぱなしになっており、道路側一面に貼られた窓も開放されていてとても清々しい料理屋だ。  このお店の料理のメニュー表に目をやると定食と坦々麺という二つのジャンルに分けられ料理名が並んでいる。麺類ではなく坦々麺。ここに中華料理の強みを感じさせられた。こんなメニュー表を渡されてしまったら坦々麺の中から選ぶしかない。  料理を注文し終わると、友人が餃子を頼むのを忘れていたことに気づく

          これだから中華料理屋はいいのだ

          わたしは予報機械

           どうも頭が痛い。明日は雨が降るようだ。熱が出ている気もしない。体もだるくない。ただ頭が痛いせいで頭が回らない。  喉に違和感がある。明日から花粉が強くなるようだ。痛いわけではない。喉が荒れているというより、何かが喉に引っかかっているような感覚。     川の匂いが強い。明日は晴れるし暑いかもしれない。他の水とは違う、誰もが共通で生臭いと思うに違いないあの匂い。  あの子が泣き出した。これから突然雷雨になるかもしれない。彼女は外出していて、人通りが多そうな道なのだが周りに

          別れ話、男からの返信

           別れを切り出すと、彼から帰ってきた一言目は「俺も思ってた」  思ってたのなら男が先に切り出すべきでは、と思う節は誰しも皆無ではないはず。まあ、苦し紛れの言い分なのは明らかであるし、それは後の言い分からも明かされる。  この一言を枕詞に、つらつらとお互いが距離を置くことが正しいという理屈を並べているようにうわべでは話を続けるが、実際のところその理屈は綺麗に整列していない。ここで語られる言葉のほとんどは意味を果たさないようだ。意味を果たさないというのは言い過ぎかもしれないが、こ

          別れ話、男からの返信

          恋愛の根拠

           恋愛の相手を選ぶ時、何を基準にして選ぶのか。選ぶという言い方は偉そうであるし、そもそも選ぶものではなくて惹かれ合うというロマンチックなものかもしれないのだが、私は恋愛を知らないから選ぶと言わせてもらう。    その基準は容姿なのか。顔つき、スタイル、洋服。  その基準は性格なのか。優しい、明るい、賢い。  その基準は趣味なのか。推し、音楽、映画。  もしかしたら全部なのかもしれないし、そんな簡単なことでくくれるものじゃないかもしれない。  どこかで聞いたことがある。「一緒

          だらけることは不可能

           今は大学一年生。この春休みが明けると二年生になってしまう。  大人は私に「だらけられるのは大学時代だけだよ」という誘惑の言葉をかける。  私はまだ社会を経験していないから知ったツラをすることはできないのだが、大人を傍観していると今みたいな自由な時間は与えられていないように思う。だからだらけることができるのは今だけなのは正しいのだろう。  学生は自由。そう自由なのだ。社会に出てしまえば世の中の出来上がったレール、もしくは新しいレールの上を走ることになる。それに対して今の私には

          だらけることは不可能

          当店は「レディース」のみ扱っています

           買い物をした話。  あるデザイナーのポスターを求めアパレルショップに行った。ポスターを買うのになぜアパレルか、と聞かれれば簡単なこと、そのブランドのグラフィックをそのデザイナーが担当しているからだ。デザインを学ぶ私としては一度赴いておきたかったのだ。  入り口をくぐり抜けるとなぜか冷たい視線。それはなぜか、その答えも簡単なこと、私が男であるから。そのアパレルブランドは女性の洋服しか扱っていないのだ。冷たい視線にいくつか刺されながら、歩いていくとある一人の店員が「こちらですか

          当店は「レディース」のみ扱っています

          「コーヒーが冷めないうちに」見えてしまう粗

           映画「コーヒーが冷めないうちに」を見た。私が見て思ったことを生意気に語る。  この作品はいわゆるタイムスリップものの類いである。しかし、タイムスリップの方法や制約が独特に設定されているため、他とは違う面白さを作り出せている。タイムスリップをする方法はコーヒーを淹れること。ある特定の席に座り、ある特定の人がコーヒーを淹れることでその席に座った人はタイムスリップすることができる。ただし、タイムスリップできる時間がコーヒーを淹れてから冷めてしまうまでの間。その間にコーヒーを飲み干

          「コーヒーが冷めないうちに」見えてしまう粗

          クリスチャンマークレー、ユージーンスタジオ、それを壊しに来た無礼者

           今日はクリスチャンマークレーの展示とユージーンスタジオの展示を東京都現代美術館に見に行った。  どちらの展示もとても素晴らしい展示だった。マークレーの作品は、レコードについて深く追求し、レコードを切り、張り合わせてコラージュすることで新しい音楽の作り方を試したり、レコード自体を叩く割るなどして音を奏でたり、レコードを裸の状態で流通し、その過程でついた傷を作品にしたりなどレコードならではの表現をしていた。また、マンガ、コミックのオノマトペを利用することでグラフィティの楽譜を作

          クリスチャンマークレー、ユージーンスタジオ、それを壊しに来た無礼者

          月が映すは人の生き方

           帰り道、上を見上げると私を強く照らす町の電灯たち、その光は眩しくて良く目立つ。しかし、私の視線はそれとぶつからない。私が見つめるのは等間隔に並ぶ電灯の隙間を通り抜けた先の、遥か遠くの月の姿。月は光るが電灯ほどの眩しさは持ち合わせていない。せいぜい太陽の光を反射した分だけ。それでも、私の目を奪うのは唯一無二、この世に一つしかないその存在感音声なのだろうか。周りで点で光と比べて遥かに大きいこともその理由の一つかもしれない。  それじゃあ太陽の方が、なんて思ったが、実際太陽を見惚