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飛び越える

 僕は普段、バンドで演奏することを念頭においた曲を作っている。それは実際にバンドで演奏するためのデモ曲であったり、DTMで完結するいわゆるボカロ曲であったりするわけだが、バンドサウンドで曲を仕上げるということは共通している。

 この前、ふとした思いつきでEDM系の曲を作ってみた。曲調を文章で表現することはあるいは意味のない行為だとも思っているため意味のない行為をすることになるが、EDM系というかエレクトロニックというか、目標としてそのうちハイパーポップの曲を作ることを掲げたその過程の曲というか、そういう感じ。
 ふとした思いつきで作ったと言い切ってしまうのはいささか乱暴で、リスナーとしてはそういった曲もよく聴くためいつかは作ってみたいという気持ちはずっとあった。また最近KOMPLETE 14というソフトウェア音源やエフェクトのバンドルを購入したため、その試運転をしてみたいとも思っていた。

 まあとにかく、ついに僕はエレクトロ系の、いわゆる「トラックメイカー」への第一歩を踏み出したというわけだ。

 結果として、思うように思うような曲を作ることができて、それは僕に思ったとおりを超えた何かを与えてくれた。

 出来上がった曲をデモとしてSoundCloudとSNSで公開して、当社比でこれまでとは比にならない反応を得られることができた。当社比なのに比にならないとはこれいかに。
 思うに、バンドサウンド、特に普段僕が作るようなメインストリームともサブカルチャーとも一定の距離を置いたような曲を気に入ってくれるひとたちと、いわゆるボカロ曲が好きなひとたちと、今回作ったようなエレクトロ系の曲が好きなひとたちはあまり共通する部分を持たない集合であり、またそれぞれが有する人数も異なるのだろう。
 最近は弾き語りの活動も顕在化させ始めているので、様々な領域から彩り豊かな刺激を受けられたら嬉しい。

 表向きには大きな差異として現れないようなことだが、今回、サウンド面以外の要点についてもバンドサウンドの曲を作るときと違いをつけることができた。
 つまり、これまでどおりバンドサウンドの曲を作るという営みとエレクトロ系の曲を作るという営みを、僕のなかで確かに地続きでありつつ異なる軸によってなされるものとして区別することができた、ということ。

 曲ができてから正直「僕から産み出された曲」として公開することに躊躇いを覚えてしばらく踏みとどまっていたし、翌日聴き返して「これはほんとうに僕から産み出された曲なのか?」と笑ってしまった。

 それが示すのが、まだまだ僕は僕の想像を超えられる、ということだと願う。

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