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愉快な入院生活後半

薄紙を剥ぐごとく、という表現そのまま。

朝起きるたび、「昨日よりは良いかな」の繰り返し。身体が楽になっていく、お見舞いに来てくれた人と長時間話せるようになる、院内のコンビニでどのカフェラテを買おうか迷える、その一つひとつが嬉しい。

明日いよいよ退院。入院生活を振り返ると、後半はなんだか、楽しかった(語弊があるかも)。

楽しかった理由のひとつに、面白い3人の患者さんとの出会いがある。

1人目は、Sさんというおじさん。芸術家風の個性的な身なり。

術後3日目頃、お腹を抱えながら共同洗面所に入って来た私をぽかんとした顔で見る。

「お嬢ちゃん、何歳?!」

「24です…」

「24?! どこ切ったの?!」

「肝臓です」

「24の女の子で、肝臓切ったなんて?!」

Sさん、一々リアクションでかい。

それから私を気にかけてくれるようになった。「あんたは今人生で一番大変な事もう乗り越えちゃったんだよ。もう後は良い事しかないよ」って言葉がすごく励みになった。

Sさんは若い頃、自衛隊で消防士をしてたらしい。人間関係が厳しく、心病んだ。それからは自由に生きて、オリンピックのカメラマンをやったこともあるらしい。有名なオリンピック選手から「◯◯のおっちゃーん!」と慕われているそう。常に明るく、誰とでも打ち解けるような人だけど、過去には辛い抗がん剤の治療で、40度の高熱にうなされる日々もあったという。

Sさんは先週頭に無事退院。退院の朝、私にスタバのラテとケーキを二つもおごってくれて、笑顔で帰って行きました。

2人目は、近くの病室にいるとても美人のおばあさま、Mさん。

私と同じ日に同じように肝臓を切り、同じように管たちを連れて必死に歩く中で、親しくなった。

このMさん、びっくりするような波乱万丈の人生。若い頃ごく普通のピアノ教師をしていたが、交通事故に遭い、首や足を負傷。しかし加害者が運悪く土地の権力者で、保険会社や警察、病院までグルになり、事故はもみ消され、碌な治療を受けられなかった。悔しくて一人色々勉強して訴訟。そしてそのエピソードを本にして出版。未だに知る人ぞ知る、法律業界でも使われているような本になっている。

さらに、首や足の負傷を自分で治そうと、歪みの矯正法を開発して特許を取り、何と会社を設立。しかし40代でまたB型肝炎と宣告される。人生は有限だ!と、思い切って海外にたくさん旅行。悪かった数値がイタリア旅行によって何と回復。肝炎の末にガンになってしまったが転移はなく、この度も手術成功。70過ぎとは思えないお綺麗さで、ボーイフレンドもいる。退院したらお茶に行く約束をしました。

そして3人目は、30代半ばのカッコいいお兄さんHさん。元気になって私が病院の外のベンチで日向ぼっこしている時に、たまたま出会った。

Hさんの横には松葉杖が。競技自転車の最中に、靭帯を損傷。私が手術した翌日に同じく全身麻酔で足の手術をしていた。手術前怖かったよね、という話や、麻酔から覚めなかったらどうしようと思った、という話で盛り上がった。青空の下で笑いながらそんな話をできるようになったのが幸いなことだと思った。お兄さんは面白い趣味をたくさん持っていて、けん玉と指スケボー(検索してください)を私に教えてくれた。そしてアンパンマンの絵を描いたけん玉をプレゼントしてくれた。アンパンマンの絵は下手くそでした。

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