みなみ

普段感じたささいなこと。ビジネス系興味なし。起業も投資も興味なし。

みなみ

普段感じたささいなこと。ビジネス系興味なし。起業も投資も興味なし。

最近の記事

病いの語りを見直して

先に載せた①-③と、もう一つ、「愉快な入院生活」と銘打って、入院中に出会った面白い人たちの記録もつけていた。たしかにユニークな患者にたくさん出会い、貴重な経験をしたが、入院生活自体が愉快なはずはない。 これらの記録をつけたときのことを思い出すと私はなんとか「自分に偶然降り掛かった病気」に「意味づけ」をおこなおうとしていたのだと思う。 ―がんは、「どうして私が?」ということを精神的(モーラル)に理解する必要があることを象徴的に表しているのであろう。科学的な説明では、そのよう

    • 病いの語り(正式名称は“fibrolamellar hepatocellular carcinoma”)③

      四. がんと診断されてからの精神状態 三までの文を読んでもらったら、こいつは結構強いヤツだなあ、と思うかもしれないし、 実際私も自分は強いヤツだと思っていた。 周りの方たちの助けを借りて一つひとつ乗り越え、精密検査の結果肝臓以外には転移はなく、今のところは開腹手術をしてとっちゃえばとりあえずはOK、ということもはっきりし、 メンタルはそう揺らぐことはないだろうと思っていた。 でも、やっぱり若干揺らいだ笑 そりゃあ、そうか… なので、実際どう揺らいだのか、ということを最後に書い

      • 病いの語り(正式名称は“fibrolamellar hepatocellular carcinoma”)②

        二. 肝臓は沈黙の臓器 病気は分からないことだらけ。 原因だってわからないし、そもそもがんなんて、ただ一つの要因によってなる、みたいなそんな単純な、直線的なものではないらしい。 私の体内にあるこいつが初めからがんだったのか、もしくは途中からがんに変わったのか、それもわからない。 2018年7月に病院に行った時点で、当初は膿と診断されたそいつは約4㎝、そして一年後の今は約5㎝になっている。5cmのBADなボールが肝臓の中にあっても、何らかの関係で炎症さえ起きなければ、普通に生

        • 病いの語り(正式名称は“fibrolamellar hepatocellular carcinoma”)①

          2019年に自分でつけていた記録を、以下にそのまま再掲します。 一. がんと診断されて 2019年8月、肝細胞がんと診断を受け寝耳に水、24歳女性である私本人も驚き、母も祖母も友達も上司も同僚もみんな驚き、でもその事実を受け入れて、一つひとつ対処していくしかないのだ、と。 2018年7月、インフルエンザのような発熱と身体のだるさ、みぞおちの痛みで病院へ。肝臓の中に膿が溜まる肝膿瘍だと診断を受け、一週間入院し抗生剤投与。結果炎症の数値も下がってすっかり回復。まあ人生こんなこ

        病いの語りを見直して

        • 病いの語り(正式名称は“fibrolamellar hepatocellular carcinoma”)③

        • 病いの語り(正式名称は“fibrolamellar hepatocellular carcinoma”)②

        • 病いの語り(正式名称は“fibrolamellar hepatocellular carcinoma”)①

          幸福は一夜おくれて来る

          下記、太宰治 女生徒の一節 「明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう。わざと、どさんと大きい音たてて蒲団にたおれる。ああ、いい気持だ。蒲団が冷たいので、背中がほどよくひんやりして、ついうっとりなる。幸福は一夜おくれて来る。ぼんやり、そんな言葉を思出す。幸福を待って待って、とうとう堪え切れずに家を飛び出してしまって、そのあくる日に、素晴らしい幸福の知らせが、捨てた家を訪れ

          幸福は一夜おくれて来る

          不思議の国のアリス症候群

          小さい頃、遠くにあるはずのものが急に膨張して大きくなってしまったり、逆に近くにあるはずのものを遥か遠くに感じたり、ということがありました。 調べてみると似たような経験をしている方は多く居るらしく、特に風邪をひいたとき等にそのような現象が起こった、という声が散見されました。 大きくなるにつれてこの「大きくなったり小さくなったり現象」はなくなりました。しかしそれとは別に、以下のような、自分の時空間認知がおかしい、と感じるいくつかの現象が大人になっても続いています。 ・何の前触

          不思議の国のアリス症候群

          ジブリで一番好きな作品「風立ちぬ」

          来週、8月27日の金曜ロードショーは風立ちぬです。 もっと研究せねばならないし、結局岡田斗司夫さんの解説の受け売りですが、個人的に「風立ちぬ」には凄まじく惹かれるものがあります。なんでこんなに惹かれるんだろう…と来週のTV予告を見ながらまた今日も考えてました。 風立ちぬは、美しい夫婦愛、とよく宣伝されます。勿論そういう側面もあると思いますが、 簡単に言うと、超自己中心的でナルシスティックな男と、超計算高い女が「共に生きる一瞬」をどれだけ美しいものへと高めていくかという、恐

          ジブリで一番好きな作品「風立ちぬ」

          病棟化するコロナ社会

          最近のコロナに関する社会的な空気感と、東さんのゲンロンカフェ配信やtweetを見て色々考えたことが溜まってきたので、noteにまとめてみることにしました。 2019年の夏に、私は大きな病気になってしまって、入院して手術しました。二つの病院を渡り歩きましたが、今こうして元気にやっており、病院の先生や看護師さんには感謝しかありません。 病棟でいつも最優先なのは「治療」です。病院は医療機関です。身体を「治す」ことが最優先なので、リスクファクターとなるものは全て排除されますし、「

          病棟化するコロナ社会

          愉快な入院生活後半

          薄紙を剥ぐごとく、という表現そのまま。 朝起きるたび、「昨日よりは良いかな」の繰り返し。身体が楽になっていく、お見舞いに来てくれた人と長時間話せるようになる、院内のコンビニでどのカフェラテを買おうか迷える、その一つひとつが嬉しい。 明日いよいよ退院。入院生活を振り返ると、後半はなんだか、楽しかった(語弊があるかも)。 楽しかった理由のひとつに、面白い3人の患者さんとの出会いがある。 1人目は、Sさんというおじさん。芸術家風の個性的な身なり。 術後3日目頃、お腹を抱え

          愉快な入院生活後半

          韓国映画『オアシス』

          不器用で社会に馴染めず出所してきたばかりの青年ジョンドゥと、脳性麻痺で身体の不自由な女性コンジュの、周囲から全く理解されない恋愛の物語です。 序盤の方に、印象的な(かつ残酷な)シーンがありました。 コンジュは兄夫婦に半ば「棄てられている」ようなものなのですが、アパートの隣に住む中年夫婦が一応形ばかりの世話をしています。 真昼に中年夫婦がコンジュの部屋に入って来て、「見られてるよ」「あの子に見られたって別に」と言いながらセックスします。見かねたコンジュは静かに寝室の扉を閉

          韓国映画『オアシス』

          姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』(ネタバレあり)

          去年初版が出たばかりで話題になっていた『彼女は頭が悪いから』を読みました。良くも悪くもこんなに吐きそうになった小説は久しぶりだったので、ちょっと感想を書いてみようと思いました。一言で言うと、小説自体がどうこうというよりも、これを元にいろんな立場の人と議論してみたい、というのが一番の感想です。これを読んで、どんな人がどう思うのか、というのが個人的にいちばん気になります。私はこの小説を読みながら自分の中の「善人」と「悪人」が交互に出てくるのを感じました。 ①概要 2016年に

          姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』(ネタバレあり)

          どこまで行っても同じ町

          山内マリコさんの小説『ここは退屈迎えに来て』の中に、こんな一節があります。 「取材を終えた車は夕方のバイパスを走る。大河のようにどこまでも続く幹線道路、行列をなした車は時折りブレーキランプを一斉に赤く光らせ、道の両サイドにはライトアップされたチェーン店の、巨大看板が延々と連なる。ブックオフ、ハードオフ、モードオフ、TSUTAYAとワンセットになった書店、東京靴流通センター、洋服の青山……」 四国の田舎にある私の実家の周りは、一面の田んぼにぽつぽつと並んだ一戸建て、老朽化し

          どこまで行っても同じ町