・RSBC世界における日本駆逐艦の発展 「第二次世界大戦開戦時における日本駆逐艦の編制(1940)」
それではRSBC世界における日本駆逐艦の発展について、第四期となる『第二次世界大戦から日独休戦、その後の第三次大戦勃発までの期間における日本駆逐艦の活動と、発展』について考察していこうと思います。
その前提として、まずは、日本の立場から見ての対独開戦前夜の状況と、その中で行われる対独開戦時の海軍部隊の戦闘序列がどうなるであろうかについて考察していくことにします。
なお、ここでは今までとは異なり、日露戦争後から23年となる、1、2、3期の内容を下敷きに、史実と大きく変わった歴史の中でRSBC世界の日本駆逐艦がどう編制され、戦没し、建造されるかを自分なりにシミュレートしつつ語っていくことになりますのでご注意下さい。
大戦勃発時の日本、極東アジアの状況
さて、まずは、1939年9月1日、ヒトラー率いる独逸第三帝国がポーランドへ宣戦布告し、これを皮切りに世界で二度目となる大戦が勃発します。
これに対し日本は、様々な理由から英国側として独逸に即時宣戦布告が出来ませんでした。
これについてはいくつもの理由が存在しています。
まず、日本が自国の眼前にある中国大陸において国共内戦に長く関与していたことがあげられるでしょう。当時中国では日本が国府軍を援助する一方、ソ連が中共軍へ多くの軍需物資を供与しており、泥沼化している状況でした。
そのような状況で対独宣戦布告をしようにも、当時は独ソ不可侵条約が調印されており、背後の心配が無くなったソ連軍が直接的に中国大陸へ介入を図る可能性が高かったため欧州方面に陸軍は戦力を派遣することは難しかったのです。
一方海軍においても、史実ではこの時期、新鋭艦艇のタービン翼が破損するいわゆる臨機調事件もあり、竣工直後の朝潮級駆逐艦がリタイア状態でありましたから、RSBC世界でもこれと同様のことがあったでしょうから、海軍が作戦行動を行うための駆逐艦の数が満足にありませんでした。
これに加え、作中でも軽く述べられておりますが、東アジアでは1938年以来合衆国がフィリピンを拠点とするべく陸海空軍兵力の増強が行われていたことから、この時の日本は本土近海から海軍の主力部隊を引き抜くことが出来ない状況にありました。
ソ連からは陸軍を、合衆国からは海軍を拘束されていることで、この段階では日本はとても早期参戦を行える状況では無かったことが分かります。
このため、対独宣戦布告が出来なかった原因として、腰の定まらない人物であった近衛文麿首相が一方的に悪いとも言い切れない状況であったと言えるでしょう。
幸い、ローズヴェルト大統領は第二次世界大戦において反独姿勢を取ることを決め、『アーセナル・オブ・デモクラシー』発言を行います。日英はこれまでの歴史的経緯から合衆国と対立状況にありましたが、少なくとも合衆国との戦争は避けられることが見えたことで日本は海軍を主力とした部隊を欧州を初めとする世界各地に展開する準備を開始する事となります。こうして第二次世界大戦における日本の対独宣戦がなされるのは、作中で記載されていた1940年夏の日独の初交戦が起こる時期まで遅れることになりました。
日本海軍の対独開戦時の戦力状況と戦闘序列
さて、対独宣戦の布告により日本は金剛級戦艦と翔鶴級空母からなる第5航空戦隊を中核とした遣欧艦隊をヨーロッパに派遣しています。また、中東、インド洋方面でも作戦行動を行い、大損害を受けていることが作中述べられています。
これらを踏まえて、第二次世界大戦における日本海軍の戦闘序列を考えてみることにしましょう。
まず、主戦力として第一艦隊、及び第二艦隊は日本本土に引き留め置かれることになります。これは全体の総予備としての役目がありますが、対ソ開戦が起こった場合に備えるといった意味もあります。
この中で駆逐艦は、第2水雷戦隊を中核とする精鋭と、訓練未了の新鋭艦を中心とした部隊が居残ることになるでしょう。
一方で、英国本土には戦艦<金剛>と第5航空戦隊を主力とする遣欧艦隊が送り込まれます。
こちらは作戦行動にUボート対策に加え、十分な航続力が必要となることから第2水雷戦隊に次ぐ精鋭となる第4水雷戦隊を中核とした部隊が配属されます。
インド洋方面には遣印艦隊を新設して同方面の船団護衛と中東方面の支援を担うことになります。こちらは水雷戦隊の数が足らないため、第5水雷戦隊を編制します。インド洋はUボートだけではなく、仮装巡洋艦による通商破壊戦も行われているため、それなりの対艦攻撃力が必要であるため、吹雪型のような比較的古いながらも強力な駆逐艦を中心として充当されます。
その他の艦隊としては中国方面を対応する第3艦隊が存在します。
この艦隊は従来からの流れで維持されている建成部隊になりますが、長江などで作戦するため、砲艦を中心とした小さなものとなっています。
これに加え、合衆国に対する警戒のため、南洋諸島を管理する第4艦隊、及び東南アジア方面を警務する第5艦隊が設立される事になります。
この両者は警戒を主とする任務のため、峯風級を中心とする旧式艦艇が配備されますが、戦局の悪化とともに戦力を引き抜かれ各戦線へと回されるでしょう。
またこれ以外にも、欧州方面やインド洋へ物資輸送や船団護衛を担当する各種の部隊が新設される事となります。
以上の筋書きの元、編制を考えるならば以下のような形となるでしょう。
連合艦隊(司令官:山本五十六中将)
├─第1艦隊(司令官:山本五十六中将 本土予備)
│ ├─第1戦隊 加賀級戦艦2、長門級戦艦2
│ ├─第2戦隊 伊勢級戦艦2、扶桑級戦艦2
│ ├─第12戦隊 長良級軽巡1、球磨級軽巡1
│ ├─第3水雷戦隊 川内
│ │ ├─吹雪級4
│ │ ├─吹雪級4
│ │ └─吹雪級3
│ └─第1航空戦隊 天城級空母2
├─第2艦隊(本土予備)
│ ├─第4戦隊 高雄級重巡2
│ ├─第5戦隊 妙高級重巡2
│ ├─第7戦隊 最上級重巡4(主砲換装中のため戦力外)
│ └─第2水雷戦隊 神通
│ │ ├─陽炎級4
│ │ ├─陽炎級2、朝潮級2
│ │ └─朝潮級4
│ └─第2航空戦隊 瑞鳳級空母2
│ └─第3航空戦隊 日進級水上機母艦2
├─遣欧艦隊(司令官:高須四郎中将)
│ ├─第3戦隊 金剛級戦艦2
│ ├─第7戦隊 利根級軽巡2(主砲未換装)
│ ├─第11戦隊 球磨級軽巡2
│ ├─第13戦隊 高雄級重巡2
│ ├─第15戦隊 長良級軽巡2
│ ├─第4水雷戦隊 那珂
│ │ ├─朝潮級4
│ │ ├─白露級4
│ │ └─白露級4
│ └─第5航空戦隊(司令官:小沢治三郎少将)
│ └─翔鶴級(初代)空母2
├─遣印艦隊(司令官:南雲忠一中将)
│ ├─第6戦隊 古鷹級重巡2、青葉級重巡2
│ ├─第10戦隊 金剛級戦艦2
│ ├─第14戦隊 妙高級重巡2
│ ├─第9戦隊 球磨級軽巡2
│ ├─第5水雷戦隊 長良
│ │ ├─吹雪級4
│ │ ├─吹雪級4
│ │ └─睦月級4
│ └─第4航空戦隊 龍驤
├─第3艦隊(中国大陸担当)
│ ├─第21戦隊 砲艦部隊
│ └─その他
├─第4艦隊(南洋諸島担当)
│ ├─鹿島
│ └─第6水雷戦隊 夕張
│ ├─神風級4
│ ├─峯風級3、神風級1
│ └─峯風級4
├─第5艦隊(東南アジア担当)
│ └─第22戦隊 香取
│ ├─峯風級4
│ └─峯風級4
├─第101護衛隊(欧州方面船団護衛)
│ └─第1水雷戦隊 阿武隈(栗田健男少将)
│ ├─白露級2、初春級2
│ ├─初春級4
│ └─吹雪級4
├─第102護衛隊(船団護衛部隊)
│ ├─長良級軽巡1
│ ├─睦月級4
│ └─睦月級4
├─第103護衛隊(船団護衛部隊)
│ ├─長良級軽巡1
│ ├─神風級4
│ └─峯風級4
└─その他各種艦艇
戦隊ナンバーは仮ですが、概ねこのような感じで配分されると考えられます。
さて、これを見て分かるのが各部隊の駆逐艦が全くと言って良いほど足りていないことが分かると思います。日本本土には23隻がありますが、主要な戦線である欧州およびインド洋方面にはそれぞれ12隻しか駆逐艦を配備出来ていません。
これに加えて船団護衛に投入出来る戦力は僅か28隻と、これではとても全ての商船を守ることは不可能と言って良い状況です。
日本は、この絶望的な状況からどのように第二次大戦を戦うことになるのか。それが次回の考察になります。宜しくお願いします。
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