横溝発表会&読書会に参加してきました!
参加のきっかけなど。
きっかけは、Twitter(現・X)でRTが流れてきたのを見たことでした。
最初は、面白そうだけど、私なんかが参加してはいけない気がして静観していたんです。
ミステリは好きだし、横溝作品も有名なものをはじめ、パッと思い出せる範囲で少なくとも10作品以上は読んでいるのですが、それじゃ全然ファンと認めてもらえる数ではないし、横溝先生自身も作品も特別詳しい訳ではないので、気になるけど、おいそれと参加できないイメージがありました。(私の場合、横溝先生については、乱歩先生経由の情報で知っている感じなので)
文フリとかで、有名な横溝サークルさんの同人誌もずっと買ってはいるけど、ほんっんとよくこんな調べられるな……と、毎度白目になりながら読んでるんですよ。
そんな方たちが参加する会だと思うと、やはり尻込みしてしまう。(まあ、どんな分野でも、ガチ勢の方の出来上がった輪の中に入っていくのって勇気いりますよね……)
コロナ禍前は、某古書店さんの主宰する乱歩の読書会に参加していたんですが、そこはゆるーい雰囲気で、ガチ勢の方も少なく、未読の方でもどんとこい! な会で、詳しくない方の意見の方が、むしろ新鮮で面白かった。
久しぶりに「ミステリの読書会に参加したいな」と思って、石川県立図書館さんの「押絵と旅する男」の読書会にも参加しました。
その会では、乱歩のファンですと自称する人の方が少なかったので、読書会=ファンの集いではない、と再認識することになりました。
そういうことがあり、「詳しくないけど、参加してみようかな」と思えるようになったところに、今回の横溝読書会は登壇者の発表形式で行われると知り、それなら私が参加しても大丈夫かも……と思い、参加申し込みしました。
もちろん、コアなファン同士の集いというのも目的だとは思いますが、こういった会を開いて、SNSなどで参加者を募集されている以上、横溝作品を知らない人にも広めたい、新規のファンを増やしたい、という思いもあるハズだと信じて……。(そして、私以上に横溝ビギナーの売り子さんを巻き込んで参加。お付き合いくださりありがとうございます)
いざ、横溝文化祭(プレ)へ!
午前中に行った神戸文学館から新大阪の会場へ。
場所が分からず迷子になり10分ほど遅刻してしまいましたが、なんとか辿り着きました。
か、会場が、横溝作品だー!
なにこの楽しすぎる空間!!!!
小ネタが凄すぎる!!!! ツッコミが追いつかない!!!!
もう、この部屋は入れただけで、このイベント参加してよかった!!
写真見るだけで、楽しくなっちゃいますよね!
でも、本題はここからです。
今回のイベントの内容は以下のような感じ。
【第一部】横溝発表会
入場した際、一人目の発表者である、おさむしさんの「クラフト披露」の発表が始まっており、後半しか聞けず残念だったのですが、発表後にも、おさむしさんの制作物のひとつである消しゴムはんこを押させていただくコーナーが設けられていたので、そちらで実物を堪能させていただきました!!
ほんと、このクオリティ、凄すぎますよね……!! 上手く押すコツなども丁寧に教えてくださり、いっぱい押させていただきました!
良い記念になりました! ありがとうございます!!
二人目の発表は、しまPさんの「ロケ地研究」。
横溝映像作品のロケ地をめぐっておられる方で、ドラマなどに登場する建物の映像や、実際に使用された台本のメモ書きなどと照らし合わせて、ロケ地を割り出し、その地に自分の脚で赴く……コアなファンの鑑というか、もうあなたが探偵では? という現場のたたき上げ刑事の捜査資料のような物凄い発表でした。
個人的に、自分が京都出身なので、亀岡などの耳慣れた地が多かったのも嬉しかった。私も今度行った際に写真撮ってみようと思います。
三人目は、玉藻さんの「コスプレ舞台裏」。
横溝作品のコスプレイベントに参加されている方で、今回は千金(倉敷で開催されるイベント、1000人の金田一耕助の略)で、実際に着ておられた、おりんさん(「悪魔の手毬唄」に登場する老女)の衣装を持参しての発表。発表前の自己紹介から、おりんさんになりきっておられたのが印象的でした。
千金は、まち歩きイベントなので、コスプレのクオリティ以外にも、如何に軽装で素早く脱ぎ着できるか、というのも重要な要素になるので、その辺の工夫も紹介されていて、楽しそうなイベントの裏側も、やっぱり楽しそうでした!
四人目は、drakenさんの「クラフト披露」。
「悪魔が来たりて笛を吹く」で流れる笛の音のモデルとなるレコードをBGMに、自作の横溝作品のジオラマをスライドで発表されました。
作品内の描写から、建物の構造、位置関係を割り出して立体にする作業は、作品への深い愛とそれを実現する技術がないとできませんよね。両立されているの凄いです。
実物が見られないのが残念ではありますが、スライドで細かいところまで見せていただき、作品の舞台への想像が膨らむ発表でした!
【第二部】横溝読書会
15分の休憩を挟んで、後半は読書会です。
先述したように、登壇者の発表を聞く聴講型の読書会なので、私のようなものでも、課題図書を読んでさえいれば安心して参加できる読書会でした。
次の日が文フリだったので、新刊出したり色々してて、当日滑り込みで課題図書を読み終え、読了ほやほやの状態で臨みました……。なので、いつも読んだ本の内容を光の速さで忘れる私も、本を片手に、「あの場面か、この辺だったかな?」と聴講できました。
今回の課題図書は、由利麟太郎シリーズの「夜光虫」。
司会:風々子さん。
パネリスト:木魚庵さん、網本善光さん、探偵堂さん。
それぞれ、発表内容に沿ったレジュメを作ってきてくださっていて、それをもとにお話しをされ、司会の風々子さんが質問したりまとめたり、という流れでした。
風々子さんは「夜光虫の系譜」というテーマで、「夜光虫」に影響を与えた他作家の作品や、「夜光虫」に含まれる要素や類似するシーンの入った横溝作品を挙げた、作品比較のお話をされていました。そこから横溝先生が気に入って使用したものなどが垣間見れて面白かったです。
木魚庵さんは「『夜光虫』が書かれた時代の横溝作品」というテーマで、横溝先生が上諏訪で結核の療養を行っていた時期(昭和9年~14年)をピックアップし、昭和10年の「鬼火」から昭和12年「迷路の三人」までの24作品の発表時期を表にまとめてくださっていました。この表をもとに、横溝先生がどの時期にどの作品を並行して書いていたかが一目で分かるとともに、読み比べてその時期の作家がどういう意図をもって書いていたのかという作品傾向の変遷を知るのにも重宝するレジュメでした。ありがとうございます。
網本善光さんは「『夜光虫』の物語づくりの考察~横溝流「伝奇小説」のつくり方」というテーマで、伝奇小説の定義、どのような要素が伝奇小説たらしめるのか、モーリス・ルブランの「金三角」と比較を行い、その上で「夜光虫」に使用された工夫はどうのようなものか、を論じられていました。中でも、文体論についてが面白く、「夜光虫」の伝奇小説としてのスパイスに伝奇文体があるとして、乱歩先生や谷崎(潤一郎)先生の文体と比較されていました。
名文として残る文体や歌詞には、七五調が多いという説はよく聞きますが、冒険活劇の呼吸、テンポのよさ、にも活きているんだなと。
探偵堂さんは「『血まみれ観音』について」というテーマで、少女漫画雑誌『なかよし』に掲載された、高階良子先生による「夜光虫」のコミカライズ版『血まみれ観音』を紹介されていました。鱗次郎と琴絵の性別の入れ替えを世相や発表媒体との関連から推察したり、同時期に連載された『キャンディ・キャンディ』と比較し「みなしご」モノ、「おてんば」少女という共通のキーワードや、当時の女の子の憧れるファッションなどにも言及されていて、他のパネリストさんとは違った角度からのお話(作品に対するツッコミなども)が楽しかったです。
たいへん恐縮ですが、私の感想も。(超・ざっくり雑感です)
由利先生モノは「真珠郎」「花髑髏」「蝶々殺人事件」の3作しか読んだことが無く、「夜光虫」はまったくの初読、しかも10年以上ぶりの由利シリーズで、「あれ、由利先生と三津木くんて、こんな感じだっけ?」ってなりながら読みました。
久々だから私が忘れているだけなのか、執筆時期によってキャラ付けが多少違うのか、近年ドラマ化された際の記憶が混ざっているからなのかは分かりませんが。(幼少期からずっと読んできてるハズの乱歩の明智と小林にも同じようなこと思ったりするけど)
個人的には、金田一シリーズより、由利先生シリーズの方が読みやすく感じました。作品としての重厚感とかは金田一モノ(の有名な作品)に軍配があがるとは思いますが、同時にとっつきにくさもあるので。
その点、「夜光虫」は、都会的で、華やかで、フィジカル(?)で、サクサク読める、金田一モノと逆のイメージ。
というか、この作品(「夜光虫」)って、めっちゃ乱歩ぽくないですか?
見世物小屋、幽霊塔、怪人、美少年、冒険活劇……コテコテの乱歩要素がつまっている……。(だからなのか? 乱歩で育った私が読みやすいの……)
横溝ファンの集いでそんなこと考えるの邪道かな? と思ったけど、パネリストの方からもそういう声があってホッとしました。
あと、読んでる最中、途中からノータッチになってた鮎子についてのツッコミもあって、「私だけじゃなかったw」とか。
ピストルでバンバンするシーンや、冒頭の鱗次郎逃亡シーンなど、アクション要素も多いせいか、全体的に展開がスピーディーな作品で、「読む活劇」という印象を抱きました。
パネリストのお話にもあったように、文体による快活さも勿論なのですが、描写のカメラワークや照明効果のせいもあるのかなと。
鱗次郎の登場シーンや琴絵の登場シーンのカメラの動きや場面展開も印象的ですし、歌で心を通わせるという要素も、映像化を視野に入れた作りになっているんじゃないかなぁ、なんて思ったり。
特に照明に関する描写が印象的で、
のような、荒々しい動的シーンからの静寂の美しさとか、
赤と白のコントラストなど、色んな場面で照明効果を映像的に想像させる色彩の描写が素敵な作品だなと感じました。
現代のミステリ好きが、推理小説として読むと、肩透かしで物足りない部分もあったり、ツッコミどころも多々あるんでしょうけど、「細けぇこたぁいいんだよ! 面白ければ!」ですよ。
推理だけがミステリの楽しみ方ではないので、この作品の好きなところが一つでも見つかれば、それで十分読んだ価値アリなんです。
今回、この読書会で「夜光虫」を読む切欠を与えていただけたことに感謝します。
古本ドラフトお持ち帰り大会
有志による寄贈された古本を無料でお持ち帰りできちゃうコーナー。
欲しい本に付箋を貼ってマーキングしておき、希望者が自分一人だったらそのままお持ち帰り、二人以上だったらジャンケン、というルール。
まって、場合によってはそれだけで元が取れてしまうんですけど?
中には、いいのかこれ、ほんとに? という品もあったりして、どれにしようか迷いました。
しかも、一冊だけでなく、ドラフト二巡目もあり、私は以下の二冊を頂きました。
『金田一耕助語辞典』は、以前密林で買ったのですが、「サイン本欲しいやん! もう一冊は貸し出し用とか書き込み用とかにすりゃいいんだし!」 ということで。(文フリで同人誌も買ってるファンなので、今回参加した目的の一つが読書会で登壇されると知って興味があったというのもあります)
出品者の皆様に感謝しつつ、大切に読ませていただきます!
古本ドラフトでは、もう持っているなどの理由で参加しない方もおられるとのことで、おさむし工房さんのご厚意により、会場内のポスターもドラフト指名出来るようになりました!
これはみんな「わぁぁああ!」ってなりますよね、そりゃ。
私も、2つ頂きました。持って帰って、開いて見て、ふふっとなります。好きだわ、こういうの。ネタのチョイスが面白いし、芸が細かい。こういうものってセンスが問われるので、ほんと凄いなって思います。
右のは読書会に持って行った角川文庫に、ネップリ配信されていたカバーをかけたものです。可愛いですよね。
スタッフさんや参加者の皆さんの横溝愛や仲の良い雰囲気で、私のような者でも楽しく過ごさせていただきました!
イベント全体の感想としては、横溝ガチ勢のディープな集いではあったけど、大丈夫、怖くないよ! みなさん優しいよ! ということを、今後参加される予定のビギナーさんにお伝えしておきます。
現場(?)からは以上です。
余談。
同人誌委託コーナーのことを少し。
次の日が文フリで、みなさん出展されることが解っていたので、文フリで買おうと思って、この日は断念しました。
いや、電車だったし、クリアファイル的なモノを忘れてきたので、絶対帰りに折れるもん……。文フリには車で行くし! って思ってたんです。
まさか、売り切れで買えなくなるとも知らずに……。
次回の文フリで入手します……( ;∀;)
実は自分も同人誌委託で申し込んでいました。
時間があったら、横溝と乱歩で何か書こうかと思ったんですが、繁忙期明けのイベント前に時間なんてあるはずもなく……同人誌委託出来るものが、昔出した『私訳・にほんノぶんがく②』しか無くて、家にある在庫全部無料で出しました。見本誌含めて全て貰って頂けたようで(無料ですし)、帰りの荷物は軽かったです。ありがとうございました。
にぎやかしにでもなっていれば幸いです。