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『マイクロスパイ・アンサンブル』伊坂幸太郎 書評#6

 「プライドなど、ただの言葉に過ぎない。」

 今回は、伊坂幸太郎さんの小説『マイクロスパイ・アンサンブル』を紹介します。


あらすじ

 ある若い男は、子どもの頃にひどい父親と周りの人々から逃げている途中、先輩であるエージェント・ハルトに助けられたことがきっかけでスパイ任務に当たるようになります。そして平凡な会社員の男は、失恋したり、また新たな恋を始めたりします。この2人がメインの登場人物で、本作は2人とそれを取り巻く人々との7年間を描いた物語です。

見どころ

 筆者はあとがきで知ったのですが、この本は福島県の猪苗代湖で行われた音楽フェスのために書かれた短編を集めたもので、そのために猪苗代湖にまつわるエピソードで構成されているとのことでした。
 本文の各所に散りばめられた太字のフレーズが、話の中でとてもいい味を出しています。これは実在する曲の歌詞で、読んでいる途中に言いたいことを代弁してくれるような、悩みを忘れて爽やかな気持ちにさせてくれるような歌詞でした。
 さらに、スパイの世界と平凡な会社員の世界がどんなふうに交差するのか、マイクロスパイとはどんな意味なのか、探りながら読んでいくのが楽しい作品です。

感じたこと

 いつもながら、伊坂幸太郎さんの描く世界はどんなピンチでも絶体絶命でも淡々としていて、軽妙な笑いを誘われました。作中にさらっと出てくる、「プライドなど、ただの言葉に過ぎない」とか「人生で大変なことがあっても、たいがいのことはもとに戻るんだ、やり直せる」といったメッセージが押し付けがましくなく、ああそうなのかもな、という納得感を持って落ちてきました。情けなくても、プライドを守れなくても、まあいっか、気楽にやろう、と思えました。

まとめ

 短編集なので読みやすいですし、楽しく読める作品でした。猪苗代湖にゆかりがある方も、そうでない方も、一読してみるのはいかがでしょうか。

※ヘッダーは武@ニイガタさんからお借りしました



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