『物語の種』有川ひろ 書評#3
あらすじ
みんながみんな、前代未聞のウイルスに悩まされているとき、有川ひろさんが始めた企画から生まれた短編集です。KADOKAWAのサイト上に応募フォームが開設されて、読者からのエピソードを”物語の種”としてそれぞれの短編が生まれたそうです。応募されたエピソードとはいえ、完全に独立しているものだけでなく連作短編になっている部分もあり、読みごたえがありました。
個人的に好きだった1篇『ぷっくりおてて』のあらすじをご紹介します。主人公は小学生の夏休み、両親の旅行のために田舎のおじいちゃんの家に預けられます。おじいちゃんと孫は互いに戸惑いながらも少しずつ絆を深めていき、”ぷっくりおててのあいつ”を見つける、ほっこり笑顔になれるお話です。
見どころ
それぞれの短編には、主人公たちの名前は出てこないのですが、それでもすっと話が入ってくる引きこまれる文体と丁寧な心情描写が魅力でした。さらに、読後に表紙の徒花スクモさんのイラストをじっくり見るのも楽しみの一つです。筆者は、有川ひろさんが有川浩名義だったときからのファンなのですが、いつもながら徒花スクモさんのイラストには作中のアイテムがたくさん盛り込まれていて、見れば見るほど味わい深いです。
感じたこと
コロナ禍に始まった企画ということもあり、コロナ禍ならではのエピソードも多く、マスク・自粛・ウェブ会議などに共感の嵐でした。コロナ禍に感じる不便さや、逆にコロナ禍だからこそ生まれた思わぬ出会いが描かれており、自分もみんなも頑張ってきたなあとしみじみしました。
それに加え、有川ひろさんの趣味である猫・宝塚の2つのテーマが取り上げられていて、2つともになじみのない筆者もなんだか興味をそそられました。猫を愛する人たちも、宝塚を愛する人たちも、それぞれ真剣に推しを愛していることが伝わってきて、推しを愛でるとやっぱり元気になるよね!とこちらも元気をもらいました。
まとめ
有川ひろファンにとってはたまらない一冊でした。有川浩さんをよく知らない方にとっても、一つ一つのお話は短いので、さくっと気軽に読めると思います。これを読んで面白かったら、ぜひぜひほかの作品も楽しんでください。
※ヘッダーはMarmaladeさんからお借りしました
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?