(詩)選択
選択
分かれ道でひとり
途方に暮れた
どちらの道も
先を見通すことはできず
魅力と危険に満ちて見える
天からの啓示も
賢者の助言もなく
ただ徒らに時は過ぎるばかり
日は傾き 決断を迫られたぼくは
おぼつかない足取りで一歩を踏み出し
もう一本の道に別れを告げた
*
それから月日は流れ
多くの野や丘を越えた
旅の道連れもできた
だが今でも時々考える
この道を取ったのは
間違いだったのではないかと
もう一本の道は
どんな国に通じていたのか
どんな花々を目にできただろうか
その道を選んでいたら
今ごろ どこで何をしていたのか
この道を選んで
ほんとうに良かったのか
天を仰いでも答えはなく
目を下ろせば
どこまでも続く道があるのみ
*
もう一つの分かれ道に来た
どちらの道も同じくらい好ましく
同じくらい不吉に見えた
連れを見やると
彼女は微笑みながら
黙ってぼくに向かって頷いた
手を取り合ったぼくらはふたり
一方の道に踏み入った
先が見通せたわけでも
確信があったのでもない
以前に比べて
知恵をつけたわけでもない
一歩踏み出せたのは
何が起ころうとも
共に歩むだれかが側にいる
ただそれだけ
どの道を取るかではなく
だれと旅をするのか それこそが
たったひとつの大切な選択なのだ
(MY DEAR 327号投稿作)
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