ぼくのスカート
11月8日より配信開始のチワタユフさんの8thシングル『ぼくのスカート』、共同編曲&ミックスで参加しております!
今回も経緯や、編曲(特にコーラスワーク)、聴きどころについてまとめてみました。経過音源を使って耳で聴く記事にしてみました。使っている音源の種類とか、DTMer向け情報付きで。
編曲ウラ話
当初はこの曲、去年出すかも…ということで、昨夏には一度アレンジを形にしていまして。細かいことは正直記憶の彼方なのですが…(苦笑)、一年経ったこの夏ごろからぼちぼちと音作りをやり直して仕上げていました。
楽器アレンジ
最終版に入ってる音符の大半は、デモの段階で詰め込まれていたものを整理したものです(+展開に合わせて削っています)。
印象的な80年代シンセっぽいメロディー類とピアノの和音を基準として、ぶつかっている音を交通整理しました。音数が多いと、どれを生かしてどれを変えるか判断に迷うのですが、歌メロとコード感を優先します。シンセは色々4種類くらい混ぜて+オクターブで重ねて補強しています。ピアノはModartt社のPianoteqと、一部エレピを重ねています。
余談ながら、ポリフォニック(多数の旋律で構成される)な曲をぶつからないように作るのは、かなり頭のなかで音符が整理整頓されていないと難しいです。ぶつからないのが正解か、というとそうではないので…こうやって音符を「修正」するときは、そのメロディーがどう機能しているか(本当にやりたい音なのか)、を総合的に判断して決めています。
DTMの編曲は、生演奏と違って後処理で質感の不揃いとか音量とかを何とでもできるので、その意味では気楽です。ただ、今回はエレキギターが入っているのですが、「エレキギターの音色」として出すとカラオケやスーパーのBGM的な軽い印象を抱かせてしまうので…ある程度音域やフレージングを調整しました。
それとなく入っているコードは、Native Instruments社のSession Guitarist – Electric Sunburstを使っています。生録フレーズをコントロールする音源で、コード弾きは圧倒的にリアルです。Session GuitaristやUJAMのVirtual Guitaristシリーズを、曲調に合わせて使い分けています。昔は自分で弾いてましたが…エディットにかかる時間やらも少なくて済むので、こういう音源が出て以降は、打ち込みだけで作ってしまいますね。それでも元デモのチープな「DTM的サウンド感」も残したかったので、コード弾きの低域をカットしてちょっと高めで入れてあります。通常なら生演奏感を目指すのかもですが、逆ですね。
Aメロやサビにオブリガートとして入るメロディーはProminy社のSC Electric Guitar 2です。ちゃんと弦の動きを自動で考えてくれる音源で、昔の1から使ってますが信頼感が高いです。ビブラートの切り替えだけ、苦手なんですけど…ミュートの切り替えやパワーコード、ハーモニクスとかも強いですし、打ち込みスキルのあるひとにはオススメの音源です。
音色は音源内蔵のエフェクトと別途アンプシミュレーターで音作りした部分と、色々あります。あくまでこの曲ではサブ扱いなので(の割に一番ミックスで苦労しましたけど)、その辺の話はまた何かの機会に。
ドラムは生系音色で、基本は生ドラ想定、ときどきドラムマシン、みたいなアレンジです。IK mutimedia社のMODO DRUMを主に使っています。物理シミュレーション音源なんで、叩く位置とかもコントロールできます。
スネアの打ち込みは、チワタさんのデモのフレーズを参考に再構築しました。ドラムを実際に弾かれる方なら「ん?」と思うような手数無視や「詰まる」部分も少し残しつつ…DTMならではの表現、ということでm(_ _)m
コーラスアレンジについて
今回の主テーマは、こちらです。
チワタさんから本歌とコーラス(仮)のファイルをいただいて、僕のほうでメロダインで音響編集して再構築しています。
まずはピッチ補正後(=チワタさんから送られてきたそのままの音符)のボーカルとコーラスを聴いてみましょう。
原色配置、ですね(音程ではなく、ご自身の感覚で重ねているのがよくわかる)。この魅力を追及する方向も好きなのですが、この曲の場合は楽器が多くて混沌としてしまうので…楽器のフレーズとぶつからないようにしつつ、コードを意識した西洋的な3度、6度中心のハモリで整理しました。
楽器を一部入れた音源です↓
どうでしょう、楽器の合間の音高をスルッと縫っているのがわかりますでしょうか?基本はコードトーンでメロの下に3度で入れて支えて、最後は6度で独自の動きを強調してみました。
そして高音を入れて仕上げます。再びボーカルだけでどうぞ。
こんな感じです。
分厚くコーティングして、多数ある楽器に負けない存在感を補強するイメージですね。EQ処理で基音や高い倍音を削ったりコンプで凹凸感を抑えて、さらにエフェクトやパンや音量を細かく調整して、完成させています。
歌モノはこうやって歌のパートが仕上がると気分が上がりますね。楽器の生録もそうですが、程よい揺らぎが加わって曲が呼吸を始めるような感じがします。
反面、ピッチ編集は超が付くほど地道な作業で、どの程度ピッチ感を整えるかはセンスなので、作家としてはしんどい工程ですね。最近でこそピッチ編集ソフトも改善されて使いやすくなりましたし、多少動かしても声質を維持してくれて楽になりましたけど。ピッチカーブをマウスで書いて耳で合わせていた時代とか…とても戻れないです(苦笑。
曲について
改めて曲の聴きどころなど。
タイトル通り、チワタユフさんのアーティスティック成分100%な楽曲!
アレンジする側としては、どこに着地させたらいいのかを制作中問われ続けるので、これで大丈夫なんだろうか…と完成するまで悩み続ける面もあるんですけども…(笑)。
まずはイントロの80年代感あるシンセ・リードのメロディー。さらに掛け合うように下からもメロディーが…あー、レトロ感あるポップス、とはならず、結構強く頭拍をスネアが埋めるドラム、と。
ベースはスライドしたり、好き勝手に動いて。ポリフォニックにギターやら何やら次から次へと色んな音が入ってくる展開で飽きさせず。終盤ついにはセリフまで登場し…。
そんな、躊躇なくポリフォニックで虹色ミクスチャーな楽曲です。
賑やかでテンポ感のある曲調ですが、詞はむしろ非常に内面的。生きたいように生きる、を問う楽曲ですね。いまの時代を象徴するようですが、チワタさんの人生観そのものなんでしょう。
激しいドラムも、ファンファーレのように高らかに鳴るシンセ・リードのメロディーも、「落ちて」だんだん空虚に聴こえてくるような。
いろいろと世界観を考察できるのも、チワタさん楽曲の魅力ですね。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
シングル8曲目ですが、それぞれ突き詰められた世界があって面白いですよね。
これにてチワタユフ第2期の楽曲が揃いました。何やらいろいろ企んでいらっしゃるようですよ?
https://x.com/chiwatayufu/status/1854402567960429033
そしてまた新たな第3期の4曲も、楽しみに待ちましょう^^。