焼き付く蒼色


電車なんか、動いてない。


暗くもなく、明るくもない、うっすら白んだ空の下。
世界から切り取られたようなこの時間、気づくと見慣れた小さな駅のホームに立ちすくんでいた。

いつから人は忘れるためにお酒を飲むようになるんだろう。
頬をさらう風が心地好くて、目を閉じる。
ふわりと聞こえてきそうな声は、もうどんな声が思い出せないのに。
日常では覚えていないような電車の色を、あのときの色を、私の脳はずっと忘れないままだ。

空を見上げてため息をひとつつく。
同じ空の下で息をしているなら、私の吐いた酸素を吸って生きてよ。



視界の端に白い光が滲む。
どれだけ時間がたったかわからないけど、夜はもう終わりみたいだ。
電車が動きだしたら、行き先を決めずに飛び乗ってみるのもいい。
その時の電車の色を、景色を、きっと忘れないだろうから。


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