世界にここだけの、RUSH BALLがくれた夏
この夏を、わたしは一生忘れないだろう。
先週末、大阪・泉大津にて行われた「RUSH BALL2020」に参加してきました。
毎年恒例だった全国各地の夏フェスの中止や、配信ライブへの切り替えが次々と発表されていく中で、「RUSH BALL、開催します」という文字を目にしたとき、スマホを持つ手と、心がグラっと震えた。
「今年はもうダメだろう」と言われていた夏フェスが、まさか大阪で開催されるなんて。本当に夢みたいだと思った。
この状況下で夏フェスを”開催”するという判断には、一体どれほどの勇気と努力が必要なのだろうか。
どんなに注意を払っても、恐れていることは起こってしまうかもしれない。そのもしもが起きてしまったら、本当に大変なことになる可能性は否めない。心ない言葉を投げかけられることも、きっと。
だからこそ、多くのフェスが苦渋の選択をしたのだと思う。
開催という判断には、様々な意見があった。
実際にSNSを見ると、開催を応援する人、今はやるべきでないと考える人、足を運ぶのは怖いから配信をしてほしいという人、今だからこそ足を運びたいという人。いろんな人の、いろんな思いが見えた。
チケットは関西2府4県に在住する人のみが対象で、当日の配信はなし。配信なし、という点については、開催するのは”あくまで今まで通りのRUSH BALL”で、妥協しなければいけない点に関してはしっかり案を練っていくという運営さんの意図なのでは、私には感じられました。
偶然にも関西地方に住む私には、チケット先行に応募できる権利がありました(本当にありがたいことです)。
そして、発表された出演アーティストのラインナップにはわたしのだいすきなバンドの名前が。
もう半年以上も行けていないライブ。
「行きたいなあ……」
真っ先に走り出したその気持ちを、一旦冷静になって保留した。
なぜなら、これは自分だけの問題ではないから。考え、悩みました。
それでも、ずっとずっと待ち焦がれていたこの機会を逃したくはないとチケット先行に申し込むことを決めました。もちろん、現地に足を運ぶからにはしっかり責任を持たなければいけないし、参加するということは自分にもリスクがあるということを覚悟した上で、です。
例年より参加者の人数もかなり少ないということもあって、チケット先行は高い倍率での抽選だったようです。
私も一度は落選しましたが、二度目でなんとか当選(8月29日・30日の二日間開催で、私は29日にお邪魔してきました)。
*
「明日、本当にライブに行けるんだ…」
前日、自分のスマホにダウンロードされた電子チケットを見つめながらそんなことを思った。実感があまりにも沸かなくて、でも心はドキドキしていて。イヤホンを耳に挿したまま、なんだか眠れない夜だった。
今年の春、突然世界は黒い渦に覆われ、「当たり前」だと思っていたことが次々に失われていきました。
それが「当たり前」ではなかったのだと、私たちは失って、はじめて思い知る。失ってから気付くことがあまりにも多すぎるとも感じるほどに。
人の嫌な部分を沢山見た。心無い言葉に傷ついた。希望なんて本当にあるんだろうかと、またあの日々は戻ってくるのだろうかと、見えない不安たちに押し潰されそうになった。
そんな今までの日々をまっさらに戻すみたいに、RUSH BALLはわたしの心をスッと軽くしてくれました。
当日、泉大津へと向かう電車やバスの中は、好きなアーティストのグッズに身を包み、久しぶりのライブに心を踊らせる人たちで溢れていました。もちろん、私もその一人でした。
それぞれが思い思いの気持ちを胸に、足を運んだ泉大津フェニックス。
「RUSH BALL2020」と書かれた大きなゲート、そびえ立つ大きなステージ、美味しそうなものが並ぶグルメブース、アーティストグッズの物販列。
それらの光景があんまりにも懐かしいものに感じられて、会場に入っただけでもグッとこみ上げてくるものがあった。
「本当に、ここで今からライブが始まるんだ…」と、会場に着いてもなおふわふわとした気持ちのままだったけれど、オープニングアクトが始まると一気に実感が。
1組ずつアーティストさんのライブの感想を書いていきたいくらいなのですが、文字数がとんでもないことになってしまいそうなので割愛させていただきます。とにかく、どのアーティストさんも最高でした。
朝から夜まで、本当にあっという間の1日でした。
アーティストさんがMCの中でこんなことを仰っていました。(あくまで私が覚えている限りのニュアンスです)
「この状況下で、このような音楽フェスを開催したのはRUSH BALLが世界で初らしいですよ」
今年の夏、みんなが集まって同じ時間を過ごし、同じ空間を生きた音楽フェスは、ここ、大阪にしかなかった。
それがどれだけ凄いことで、自分がどれだけ貴重な経験をしているのか。
RUSH BALLが成功すれば、世界中にこの状況下での音楽フェスのあり方を示していくことができる。
何かをはじめるとき、必ず誰かが先陣を切らなければいけない。RUSH BALLはそこに名乗りをあげたのだと思うと、ああ、なんて格好いいんだろう。
本当に開催する必要があるのか。どうして配信ライブじゃダメなのか。
実際に現地でライブを観たら、そんな疑問なんて何処かに吹き飛んでしまうほどにじんわり胸が熱くなって。大袈裟に聞こえてしまうかもしれないけれど、「生きててよかった」って本当に、心からそう思った。
大きなステージから客席を見渡して、
「僕たちも久しぶりのライブです!」
「みんなに会えてうれしい」
と笑うアーティストさんたちの笑顔が本当に本当に素敵でした。
目と目を合わせることの大切さ。
みんなの心が一つになれることの尊さ。
声が出せなくても、きっとマスクの下は笑顔だったはず。
みんながアーティストさんの想いに拍手や気持ちで応えている、あの空間は言葉では言い表せない、凄く素晴らしいものでした。
みんなで同じ空間を共有するということに勝るものなんて多分、この世には存在しないんじゃないだろうか。
有観客で開催をすることに本当に意味があったと私は思います。
入念に設定されたガイドライン、当日の入場の際の徹底ぶり。
一人ひとりにマナーとモラルを守ろうという気持ちがなければ、実現できなかったRUSH BALL。
スタッフさんたちも凄く丁寧な対応で案内をしてくださって、とっても素敵な方々でした。炎天下の中で一日中、本当にありがとうございました。
こんな状況だから諦めようとか、無理だ、出来ない、と決めつけてしまうのはあまりにも勿体無くて。その気になれば出来ないことなんてないんだと、RUSH BALLが私たちに教えてくれました。
開催するという判断をしてくださった運営のスタッフさん、ステージに立つと覚悟を決めたアーティストさん、泉大津市の方々、現地に足を運んだ人、”行かない”という判断をした人、いろんな理由で行けなかった人。
どの選択をしたとしても全員が正しくて、誰も間違っていないのだと、心からそう思わされた。
「開催」という判断に踏み切ったGREENSのスタッフの方々には頭が上がりません。感動を本当にありがとうございました。
つらいこと、苦しいことの方が多い日々だけれど、そんな中でも強く生きていける勇気を、希望を、前向いていく力を与えて貰いました。
何にもなかったからっぽの夏が、
RUSH BALLのおかげで最高の夏になった。
終演の直前、サプライズで夜空に打ち上げられたあの花火の美しさはきっと、この先も忘れないと思います。
”RUSH BALL2020”に関わったすべての人へ、
心からの感謝とリスペクトを。
来年の夏、また泉大津で逢えますように。