【日本語】学習者が「これ、使えそう!言いたい!話したい!」と前のめりになる授業の準備のコツ❶
こんにちは。元日本語教師です。今日は授業準備のこと、書いてみたいと思います。「産みの苦しみ」を毎回感じながらも、そのプロセスが実はすごく楽しいものでもあります(時間さえあれば。明日の1限じゃなければ。)
私は主に大人の学習者を教えていました。彼らはさまざまな経験を持っていて、話題も豊富、個性も様々で、そんな人たちがクラスに集まると、本当に何が飛び出すかわからない一期一会の化学反応?楽しさがあります。授業はナマモノとは本当によく言ったものです。
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言いたいことは絶対にある。「言いたくなる=ジブンゴトになる」こと
大人の学習者たちは頭の中のアイデアや考え、経験を思い起こしながら「こういうことを言うときに使うのか、じゃあこう言うのかな?こう言えるかな?」と考えている。言いたいことがいっぱいある。
だから、彼らがそのアイデアや考え、経験を形にできるかも!と思えるように、そして実際に形にできるように導くのが言葉を身につけるための肝であり、教師の務めだ。
自分のアイデアや考え、経験を形にできるかも!したい!と思ってもらえたら、「ジブンゴト」にすることは半分成功だ。
あとは、形と作り方を理解して、それを利用してオリジナリティを出す楽しい時間だ。
言いたいことを言う(=アウトプットする)ために必要なこと
言いたい!あれのこと言えそう!と思えるためには、その発話状況と意味を自分なりにでもつかむことから始まる。
つかんだ意味と自分が身を置きそうな発話状況がイメージできたら、「ああいう場面で言うのかも」と自分が話すイメージが湧いて、形を作るモチベーションになる。
自分なりにつかませる。例えば、2人の人がいて、一方がもう一方の近くにあるペンを指差して何か言う。言われた方はペンを差し出し、指差して何か言った人はありがたそうに受け取る。使った後は丁寧に返す。ここは実際にやってみてもいいし、イラストや動画を使ってもいい。
どんな状況?どんなこと言ってた?と聞くと、表現自体はわからなくても、状況説明を試みたり、予想してみたりしてくれる学習者が多い。
ここから順にテンポ良く、表現の意味と形にフォーカスして、「じゃあ、こんな状況だったらどう言える?」「何かこの表現を使って言いたかったことある?」と、彼らの頭の中のこと、まさにジブンゴトを日本語で表現することにどんどんトライしてもらう。
学習者が自然な表現で、言いたいことを言うために教師が考えないといけないこと
-使いそうな場面と表現をできるだけ吟味
テキストの例文が彼らの生活や言いたいことに即しているなら、活用できる。そうでない場合、例えば、「自分はこんな言い方しないな、こんな言い方されると違和感があるな、外国人が話すテキストの中の日本語だな」と少しでも感じた場合は、立ち止まって考えている。その表現を使った学習者が「変な外国人だな」と思われることは避けたいからだ。それを率先して教えるのはプロの仕事ではないと思う。自然でよく使われる形を目指すため、自然な形で、私たちがいつどう(どんな形で)使うのかをしっかり吟味する必要がある。
例えば、「vたいです。」テキストの例文は「水が飲みたいです」だったとする。普段このまま言うだろうか。何を飲むか聞かれたなら、言うとしても「水、飲みたいです」「水がいいです」「お水、お願いします」などではないだろうか。
そう考えると「Nが飲みたいです」は普段のインタラクション向きの表現ではないようだ。じゃあ、どんな形で使うか?また考える。
自然さを考えると「Nがvたいです」のまま「話す」ことはあまり普段の生活ではなさそうだ。少しフォーマルなインタビューくらいだろうか。
(イメージ:記者:今後挑戦してみたいことはありますか?
俳優:そうですね。昔から時代劇が好きなので、いつか侍の役を演じたいですね。)
では、逆に普段私たちは「vたい」を自然につかって一体どんなふうに話しているんだろう?とまた考えてみる。
まだまだあると思うが、「Nがvたいです。」の形では言わなくても、いろいろ使っていることがわかる。こうやって改めて吟味することで、自然な表現かどうかの再認識、テキストの呪縛からの解放、個人的には、日本語の面白さへの気づきにもつながっている。とても大好きな時間だ。(しつこいけど、準備の時間が豊富にあればw)
こうして抽出した多くの表現は、当然ながらそのまま全部教えるのではない。ここからまた楽しい作業が待っている。学習者のゴール、それまでの知識やその応用力、新しい表現を取り入れる力も考慮する必要があるし、時間をどのくらい使えるか、という問題も重要だ。
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次回はその辺りの考え方やプロセスについて書きます。
今日はここまで。