日本人の私が「No!」と言われた話
大学3年生の冬。
英語のプレゼンテーション大会に出場するため、重いスーツケースとパソコンと私が向かったのは、東京。
大学に入学してから、謎の行動力とチャレンジ精神を手に入れた私。
英語の弁論大会やら、翻訳ボランティアやら、とにかく色んなことに挑みまくっていた。
その中の1つ、プレゼンテーション大会の準決勝へと進んだ私は、単身東京へ向かった。
だが、ここではプレゼンテーション大会についてではなく、その滞在期間中に起こったある出来事を書きたい。
1日を過ごした大会の翌日。
2泊3日の旅行も兼ねていたため、残り2日は完全なる自由時間。
あまり関東に来ることのない私は、その当時お気に入りだったチェックのスカートを身に付けて、1人東京ブラブラ散歩を敢行した。
最初に向かったのは、青山。
始めて数ヶ月のインスタで見つけていた、おしゃれなカフェでランチを食した。
おしゃれすぎて、1人で来たことを若干後悔したが。
その後、渋谷を少しブラブラ歩き、原宿の竹下通りをのんびり歩いた。
(今振り返ると、ランチを食べた後、歩いてしかいない。)
少し疲れたから、一旦ホテルに戻ろう。駅へと足を向けた。
ICカードをバッグから取り出し、駅の改札を通ろうとしたら
「ピーーーーーーーーーーーーーー」
けたたましい、よく聞くあの音が私の手元で鳴った。
この時も今もよく分かっていないが、どうも関西人の定番ICカード「ICOCA」が使えなかったらしい。
あ、チャージ不足か、それとも何か不備があったのか。そう思ったら、すぐ近くにいた駅員さんが近づいてきた。
そして、彼が私に放った第一声。それが、タイトルにもあるとおり「No!」だったのだ。
日本の駅で、改札に通れなかった私に、なぜいきなり英語で「No!」なんだろうか。
呆気に取られている私に、駅員さんはさらに「No!」を連呼してくる。しかも、なかなか怖い顔で。
「No!Card!」とも言い始めたので、とりあえず状況を整理しようと、私は一旦日本語で切り出してみた。
「えーと、このICカードは使えないんでしょうか…?」
すると、さっきまで悪童に説教する生活指導の先生のように怖い顔をしていた駅員さんは、一瞬「あっ…」みたいな顔をした後、なぜ私が改札を通れなかったのかを日本語で説明してくれた。
「あ、分かりました。ありがとうございます。」
私はそう言って、無事に改札を通った。
駅員さんも、先ほどとは違って、少し柔らかな表情に見えた。
もう5年ほど前の出来事だが、noteを始めたときから書こうと思って、メモに残していた。
自分ではよく分かっていないが、私は少し海外の方に見える顔立ちをしているらしい。
きっと駅員さんは、改札に阻まれている私を、日本のシステムに慣れていない海外からの旅行者だと思ったのだろうか。
海外の方だと思ったら、怖い顔。日本人だと分かれば、普通の顔。
むむむ。そのことに、少しの違和感を感じてしまった。
言語の壁は時にある。だが、表情や態度からも、コミュニケーションは始まっている。
そこの時点で壁を作ってほしくない。そして、私も壁を作りたくない。
そう再認識した経験だった。
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