ペルー | ミュージック・ジャーニーvol.32
皆さん、民音ミュージック・ジャーニーへようこそ。
今回は、南アメリカ西部に位置し、かつて世界最大級の古代文明が栄えたペルー共和国へ、駐日ペルー共和国大使館の皆様とともにご案内いたします。
ペルーは、エクアドル、コロンビア、ブラジル、ボリビア、チリと国境を接し、西は太平洋に面しています。多様な地形と気候の違いから、太平洋沿岸部の砂漠地帯(コスタ)、アンデス山脈が連なる中央の山岳地帯(シエラ)、アマゾン上流・東部の熱帯雨林地帯(セルバ)に分けられ、それぞれに独自の文化が根づいています。
新旧の歴史が息づく首都リマ
首都リマは、太平洋沿いのコスタと呼ばれる乾燥大地に開かれた大都市で、ペルーの全人口の約3割に値する774万人が暮らす政治、経済の中心地です。
新市街のミラフローレス地区には、至るところに美しい公園が造られ、街を象徴するモニュメントやオブジェが野外芸術としてたたずんでいます。またオープンカフェやレストラン、ブランドショップ、ホテルなどが軒を連ね、賑やかな都会の魅力に溢れています。
断崖の上に造園されたアモール公園は、太平洋とリマ湾を一望できる市内でも人気のスポットです。園内は一日中開放され、夕暮れ時のオレンジ色に染まる大空や、夕日に照らされる大海原を眺めることができます。近くにはパラグライダーで滑空できる場所もあり、人々が空からの街の眺めを楽しんでいます。
旧市街のセントロ地区には、スペイン植民地時代からの古い建物が連なり、今なお17世紀のコロニアル時代の繁栄の様子を色濃く残しています。この街並みは、1988年、「リマ歴史地区」として世界文化遺産に登録されました。
地区の中心にあるアルマス広場は、インカ帝国を征服したことで知られるスペインの探検家フランシスコ・ピサロによって築かれ、リマで最も古い広場といわれています。他にも「政府宮殿」「サンフランシスコ教会・修道院」など、リマを代表する歴史的建造物を見ることができ、市内観光の名所として賑わっています。
神秘に包まれた世界遺産
麓からは仰ぎ見ることができない標高2280mの頂きにたたずむ石造りの遺跡マチュピチュ。巨大な石のブロックには接合材がなく、その調達先や運搬方法、建設の工程に至るまで、今でも多くの謎に包まれています。13世紀、インカ帝国の重要な聖地として築かれたこの空中都市は、1911年、アメリカの歴史学者ハイラム・ビンガムによって発見されるまで、400年もの長い間、ひっそりと眠り続けていました。総面積は約5㎢で、その約半分に山の斜面を利用した段々畑が広がり、人々が暮らした居住区跡地や精巧で美しい曲線を描く太陽の神殿、高度な給水システムなどが見られ、訪れる人々のロマンをかき立てます。1983年には「マチュピチュの歴史保護区」としてユネスコの世界複合遺産に登録されました。
ペルー中南部の乾燥した平原地帯に描かれた「ナスカの地上絵」は、古代ミステリーの一つといわれています。700以上の幾何学図形や動植物を模した絵は、紀元前2~7世紀頃、ナスカ文化時代の人々が描いたといわれています。しかしながら、これらの制作には高度な測量技術と数学的知識が必要とされ、その方法は未だ解明には至っていません。一帯は、雨風がほとんどなく、乾燥地帯ならではの気候条件が、時代を超える保存に繋がっていると考えられています。1994年には「ナスカとパルパの地上絵」として世界文化遺産に登録されました。
大自然に囲まれた国土
国土の半分以上を占める広大な熱帯雨林地帯には、アンデス山脈の雪解け水を源泉とするアマゾン川が流れ、1,000種類の動物と965種類の野生植物が生息しています。ここは生命の源ともいわれ、世界でも貴重な生態系が維持されています。国内2位の広さを誇る「パカヤ・サミリア国立保護区」は、アマゾン川流域で最も原始的な区域として知られています。豪華なクルーズ船の探検では、アナコンダ(大蛇)やナマケモノ、ピンクカワイルカ、タランチュラなど、川や森林に住む珍しい生き物を観測することができ、ジャングルで暮らす先住民に遭遇することもあるといいます。
カラフルな山肌がSNSなどで話題となり、ペルーの新しい絶景スポットとして人気を博しているヴィニクンカ山。大地に含まれる鉱物の酸化によって地層が何色にも重なって虹のように見えることからレインボーマウンテンと呼ばれています。標高5000mを超える高地にあり、約10㎞の過酷な登山道の途中では、野生のリャマやビクーニャ、放牧されているアルパカや羊に出会うことができます。
チチカカ湖は、ペルー南部とボリビア西部にまたがる淡水湖で、世界で20カ所しか確認されていない古代湖(10万年以上存続している湖)の一つです。琵琶湖の約12倍の大きさを誇り、大小41の島々が点在しています。なかでも「太陽の島」と呼ばれる島には、インカ帝国初代皇帝とその妹が降臨したという神話が残されており、インカ創世の地とうたわれています。周辺にはインカ時代以前から先住民が住みつき、今でも幾つかの部族が暮らしています。
またウロス島は、トトラと呼ばれる葦を積み重ねてできた60もの人工島を称しています。島々は通常、湖面に浮いているため、流されないようロープで固定されています。島内の住居や学校、船、教会などは、すべてトトラで造られており、その珍しい景観を求めて世界中から多くの観光客が訪れています。
様々な伝統行事と民族衣装
ペルー南部、標高3,827mのチチカカ湖のほとりに位置するプーノは、湖周辺に存在する約300種類のフォルクローレの首都と呼ばれ、毎年2月、「カンデラリア祭」が開催されます。これは、16世紀にスペイン人が持参した「聖母カンデラリアの像」を祭る行事で、パレードでは、カラフルな衣装を纏った聖母像が掲げられ、最終日には、数千人のダンサーとミュージシャンが、市内5㎞の道のりを行進します。
リオデジャネイロ(ブラジル)、オルーロ(ボリビア)のカーニバルと並び、「南米三大祭り」の一つに数えられる「インティ・ライミ」は、かつてインカ帝国の都であった世界文化遺産の街クスコで、毎年6月24日の冬至の日に開催されます。ケチュア語でインティは「太陽」、ライミは「祭り」を意味し、会場では、前年の穀物の豊穣を「太陽の神」に感謝し、新たな1年の豊作を願う儀式が行われます。200におよぶ公式儀礼行事には、イベントを彩る800人以上の演者が関わり、国内外からも12万人もの人々が訪れます。その他にも郷土舞踊やコンサート、講演会、クスコ郷土料理の試食会、民族衣装のファッション・ショーなどが催され、祭典期間中は街中が熱気に包まれます。
数多の民族が暮らすペルーには、古くから伝わる色とりどりの民族衣装が存在します。特に、アンデス高原に住むケチュア族やアイマラ族が着る民族衣装は、三つ編みに帽子、肩にショール、裾の広がったカラフルなスカートという出で立ちが特徴です。生地には、寒さに強いリャマやアルパカの毛が使われ、地域や村によってデザインが異なり、多種多様に富んでいます。
国内の数あるフォルクローレの中で「マリネラ」は、海岸地帯で愛されている国民的舞踊です。そのうちの「マリネラ・ノルテーニャ」は、細かなレースが施されたロングスカートを翻しながら踊る姿が美しく、気品に溢れています。
民音では、2011年に「ペルー新音楽伝説」の公演を行いました。
力強い歌声とアフロ・ペルー発祥の打楽器カホンを使った熱いパフォーマンスをお聴きください。
1.「心と向き合って」
<マック・サルバドール>
若い頃から数々のコンクールで優勝し、アンデス音楽界では圧倒的な人気を誇っている。現在は地上絵で有名なナスカを拠点に、アヤクチョ、クスコ、アレキパ、イカ、リマといった街で活躍する現代のアンデス音楽のスター歌手。独特の甘く女性的な高い声が特徴で、哀愁いっぱいのメロディーが日本人にも聴きやすい。
2.「カホンの演奏」
<エル・コレクティーボ・パレンケ>
2008年4月に若いカホン奏者、ダンサー、演劇家が集い、正式に結成。結成当時から人気を得るようになり、国内外で様々なフェスティバルに参加してきた。カホンとダンスが織りなすステージ・パフォーマンスは必見。
3.「アプリマックのカーニバル(プクヤイ)」
<コティート>
ペルー政府から「カホン大使」に任命され、録音・コンサートで世界中を飛び回るワールドミュージック界の巨匠。クリオーヨ/アフロ・ペルー音楽を代表する女性歌手、スサーナ・バカと共演作「ラメント・ネグロ」は2002年ラテングラミー賞でベストフォークアルバム賞を受賞。心の底から滲み出てくるような声と、シンプルかつ絶妙なカホンの音で織りなす音楽は、まさにアフロ・ペルー音楽の極致。
大使館推薦の音楽家
駐日ペルー共和国大使館が推薦する音楽家「チャブーカ・グランダ」を紹介いたします。
チャブーカ・グランダは、世界的なペルー人作曲家でありシンガーソングライターでその並外れた芸術的な感性により、ペルーの民間伝承と歴史を基に100曲以上もの作品を作りました。
作曲家としての長いキャリア中で、トンデロ、クレオールワルツ、アフロ・ペルーなどのさまざまなリズムを取り入れました。2017年に彼女の音楽作品は国の文化遺産に指定されています。またペルー政府は彼女の死後、2019年に最高位であるペルー太陽勲章を授与しています。
本日は、今のなお国内外の音楽家に演奏されている彼女の代表曲より、ラ・フロール・デ・カネラ(La flor de la canela)“シナモンの花”、ベジョ・ドゥルミエンテ(Bello Durmiente)をお楽しみください。
1.「シナモンの花」
チャブーカ・グランダを象徴する曲であり、ペルーのクレオール音楽を代表する曲の1つです。
2.「ベジョ・ドゥルミエンテ」
チャブーカ・グランダとオスカル・アビレスを最も象徴する楽曲の再リリース。ギタリストのセルジオ・サラスの伴奏でファン・ディエゴ・フローレスが演奏に参加しています。 シンフォニア・ポル・エル・ペルーによって制作されました。
オアシスの町ワカチナにはレストランやリゾートホテルが並んでいます。
皆さんペルーへの音楽の旅はいかがでしたでしょうか。
音楽の旅はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに。
協力、写真提供:駐日ペルー共和国大使館
Min-On Concert Association
-Music Binds Our Hearts-
この記事は英文での提供もしています。
https://www.min-on.org/10725/min-on-music-journey-no-32-peru/
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