古い手帳から
零れ落ちた ひとひらのネガフィルム
記憶をたどるのに 少し時間がかかる
君の笑顔が 駆け足で蘇る
ライトテーブルの代わりに
パソコンのモニターを真っ白にする
―笑ってよ、絶対。
―うん、わかった。
セルフタイマーのシャッターが切れる瞬間
君は 僕の頬にキスをした
動いた君の顔が ほんの少しぶれている
―ねぇ、あの写真撮れてた?
―全然だめ。君の顔、思いっきりぶれてた。
ほんとは 一枚だけ現像した
でも すぐに 捨てた
決して忘れないと思ったシーン
僕の記憶のなかにだけ 残ればよかった
君は 覚えているだろうか